この記事の写真をすべて見る

 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は締め切りを守れるかギリギリの戦いをお送りする。

*  *  *
俺は今、焦っている。

真剣に焦っているのだ。

現在、某日の17:25。

この某日。

実は、

このコラムの締め切り日なのだ。

なに?

当コラムにたびたび登場する担当K氏に、締め切りを守らず怒られるのがそんなに怖いかって?

馬鹿を言ってはいけない。

怖いなんてもんじゃない。

天変地異よりも怖い。ムチャクチャに怖い。なんだろう。大怖い。「だいこわい」と読んでほしい。「在庫ない?」に似てる気がする。

そんなことを言っている場合ではないし、思ったほど笑いに転化できてないのは焦っているからだ。大焦っているからだ。「だいあせっている」と読んでほしい。「ダイア生命」と似てる気はあまりしない。

しかし担当K氏に怒られる以上に、俺が焦っている理由は、実は他にある。

現在、冷蔵庫に、いい日本酒が冷えている。

なんとしても、

なんとしても馴染みの魚屋で、寒ブリと白甘鯛の刺身、および銀ダラの西京焼きをゲットしたい。

しかしだ。

その馴染みの魚屋の営業時間は、

18時まで。

繰り返すが、現在、某日の17:35。

ダイア生命とか書いてるうちに冒頭から10分が過ぎてしまった。

ダイア生命って実在するのかな?

実在してたら勝手に名前を使ってごめんなさい。

おい待て。

ダイア生命に忖度してる間に17:38になってしまったではないか。

18時までにこのコラムを書き終え、K氏に送らなければ、俺の今夜の夢のような晩酌プランが水泡に帰(き)す。寒ブリと白甘鯛の刺身、および銀ダラの西京焼きが水泡に帰してしまうのだ。

なに?

寒ブリも白甘鯛も銀ダラも、もともと水泡にいたんだから帰していいのでは、だと?

そんな悠長なことを言っている場合ではないのだ馬鹿野郎!!

次のページ
賢明な読者諸君は、もうお気づきだろう…