逮捕に時間がかかったことについて、日本の捜査関係者が言う。
「2019年11月、廃ホテルには60人とも70人ともいわれる日本人がいた。フィリピン当局の捜査で逃げた日本人が20人はいた。日本人同士も相手の本名などは知らないので渡辺容疑者や小島容疑者ら主犯格の情報を日本側で把握するのが遅れて、フィリピン側に伝えられなかった。ようやく突き止めることができたのが21年になってしまった」
2019年の時点で渡辺容疑者らをフィリピンで拘束できていれば、一連の強盗事件は起こらなかった可能性がある。
朝日新聞元マニラ支局長の柴田直治・近畿大学国際学部元教授が、フィリピンの捜査事情についてこう説明する。
「2019年の時に渡辺容疑者らは当局の捜査からうまく逃げた。日本の警察なら指名手配して捕まえようということになるのですが、法治の事情が違うフィリピンではそうはいかない。重要事件でも、このビルの何号室にいるからなど、日本から具体的な情報を提供して詰めていかないとフィリピン当局はなかなか動いてくれません」
なぜフィリピンが日本人犯罪者の逃亡先となり、犯罪の拠点になるのかについては、こう語った。
「日本から比較的近いし、ビザが不要で入国できる。昔から犯罪者の逃亡先はフィリピンというようなブランドもある。マニラなら日本語でもある程度、生活できる。フィリピンには日本の犯罪者にぴったりのインフラが整っている面がありますね」
(AERA dot.編集部 今西憲之)