渡辺優樹容疑者らが収容されている施設=2023年1月28日
渡辺優樹容疑者らが収容されている施設=2023年1月28日
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「刑務所のような入管施設の中でも(犯罪を)やっていたんですね。本当にずる賢い、カネへの執着がすごい人だった」

 こう振り返るのは30歳代の男性、Aさん。「ルフィ」を名乗って全国で相次ぐ強盗事件を指示した疑いがある4人の男のもとで、「振り込め詐欺」事件にかかわったことがあるという。Aさんが、「ルフィ」の手口やその素顔について、AERA dot.の取材に詳細に語ってくれた。

 フィリピンを拠点とする「振り込め詐欺」事件の幹部だとしてフィリピン・マニラの入国管理局の施設に収容中の容疑者4人が、日本に引き渡されることになった。相次ぐ強盗事件を指示した「ルフィ」も含まれているとみられる。日本に送還されるのは渡辺優樹(38)、小島智信(45)、藤田聖也(としや)(38)、今村磨人(きよと)(38)の各容疑者。警視庁は2月7日、今村、藤田両容疑者をフィリピンから移送中の航空機内で逮捕した。

 Aさんはなかでもリーダー格の渡辺容疑者や小島容疑者のことを、よく覚えているという。

 2019年11月、マニラにある「振り込め詐欺」の拠点が現地当局によって急襲され、36人が拘束された。Aさんはその中の一人だった。日本に強制送還され、有罪判決が下された。

「渡辺はその時からボス、組織のトップでした。当局に襲われたとき、拠点にはたぶん50人以上の日本人がいて、10人以上がどさくさに紛れて逃げた。私も最初は逃げたが、スリッパに上半身裸だったので、近くですぐに捕まってしまった。渡辺は現地にフィリピン人の奥さんがいると聞いていた。当局に襲われたときは別の場所に住んでいて助かったのではないかと思う」

 Aさんが犯罪組織に加わったきっかけは、SNSで探した「闇バイト」だった。50万円ほど借金があり、SNSで「高額バイト」「即金」などと検索しているときに「海外運搬」「当日支払い」「高収入」という仕事の内容を見つけて、メッセージを送った。

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