パソナグループの看板
パソナグループの看板

「あまりにひどいことで、ただ驚くばかりだ」。こう話すのは、大阪府枚方市役所の担当者。その矛先は、大手人材派遣会社のパソナ(本社・東京)だ。新型コロナウイルスのワクチン接種予約の電話受付業務を請け負っていた、大阪府枚方市、吹田市、兵庫県西宮市の3つの自治体で、電話受付の対応をするオペレーターの人数を水増しし、過大請求していたことが明るみに出た。パソナによると、再委託したエテル(本社・大阪市)が、水増しした報告をしていたためという。

【写真】パソナグループの創業者で経営トップの南部靖之氏はこちら

 過大請求した金額は、枚方市が約3億6千万円、吹田市が約2億7千万円、西宮市が約4億5千万円。3つの市あわせて10億円以上という巨額にのぼる。すでに3市からはパソナに水増しを含めた請求額が税金から支払われていた。

 過大請求が発覚したきっかけは、昨年11月1日、枚方市で新型コロナウイルス・オミクロン株対応のワクチン接種の受付を開始したことだった。

 この日、エテルからパソナへは3500件の電話予約に対応したという報告があり、パソナはそれを枚方市に報告した。だが、実際には予約システムに750件の入力しかなかった。

 枚方市の担当者が憤慨する。

「4倍以上の差があり、パソナを通じてエテルの状況を確認してもらいました。すると契約では100人のオペレーターが配置されていなければならないのに、たった33人しかいなかったと報告がきたのです」

 オミクロン株の受付開始日ということもあり、市民から多数の予約申し込みがあることが見込まれていた。にもかかわらず、オペレーターが3分の1しかいなかったわけだ。

「市民からは、電話がつながらないという苦情もきていました。オペレーターの人数がしっかり確保されていないとなれば、そうもなります。その後の調査で、市がクレームを出すまで、2021年3月からずっと、オペレーターの人数が不足していたこともわかりました」

 エテルは当初から十分な人数を確保せずにオペレーター業務を続けて、入電や予約などの数を水増しした報告を続けていたという。

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら
次のページ