落ち込んでいたとき、「ワインの連載をしない?」と声をかけてくれたのは、雑誌時代に知り合った業界の知人だった。趣味の旅行で出会った人との縁は、紀行の執筆依頼につながった。「意外なところから仕事の紹介がいくつもあった」と振り返る。
今、フリーランスのエディターとして働く池田さんは「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ」がビジネスには重要だと実感している。大親友のような強いネットワークよりも、ちょっとした知り合いの緩いネットワークが仕事を運んでくれたからだ。
2月4日には仲間3人と一般社団法人「Beautiful 40’s」を設立。大学院の研究テーマとエディターの経験を生かし、40代以降の女性の悩みに向き合い、助言できる存在になりたいと考えている。臨床心理士の資格を得るための一歩として、春からは放送大学で心理学を受講。60歳までに2度目の大学院入学を果たすつもりだ。
リクルートキャリアの藤井さんは、「働く」意味は二つあるという。一つは「傍(はた)を楽にする」。周囲が喜んでくれることがやりがいになる。もう一つは「旗楽(はたらく)」。自分の好きなこと、やりたいことの旗を掲げて、それを楽しむ。わくわくできることは長く続けられる。いずれも報酬や地位とは無関係の価値だ。
「この人のために何とかしたい。あるいは、自分が培った経験はいろんな人から教わってきたものなので、次世代に恩返ししたい。こうした無我の境地が働く動機になっている人は強い」
(編集部・渡辺豪、ライター・羽根田真智)
※AERA 2020年2月17日号より抜粋