職場で「つながる」や「ひとつになる」は、面倒になった──。最近はそう感じている人も多いだろう。だが、イノベーションを生み出す企業は、私たちが忘れかけていた一体感を意識していた。AERA 2020年1月13日号では、各企業の取り組みに迫る。
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クラウドサービス「Dropbox(ドロップボックス)」を提供する米ドロップボックス社では、プロジェクトを進めるとき、決まって飛び出す言葉がある。
「カップケーキを入れよう」
おやつ休憩、ではない。カップケーキは「遊び心を忘れないように」という、同社が大切にする価値観の一つだ。
カップケーキを守るための努力は惜しみない。米サンフランシスコにある本社には、さまざまな社内文化を作り出す専門集団「ブラックオプス」が置かれているという。いったいどんなことをするのか。
「ブラックオプスは各国の人事と話し合い、文化に合わせたカルチャー作りも手掛けます。たとえば、新しいオフィスを開設するときも、壁の色からライティングまで、すべてのデザインにブラックオプスの精神を反映します。だから、どのオフィスにいてもDropboxyであると実感できます」(同社日本オフィスの高橋美智子さん)
Dropboxyとは「ドロップボックスらしさ」を表す言葉。その「らしさ」は、随所に表れている。たとえばオフィスの片隅に置かれたカードスタンドもそう。
「感謝を伝えたいときは、このカードに手書きメッセージを書いて渡します。海外のオフィスに送ることもあります」
と高橋さん。新しいことに挑戦した仲間を称えるときには「TAKE A RISK」のカードを贈る。6億人以上のユーザーを抱えるクラウドサービスの社員が、仕事ではカードのようなフィジカルを慕うのも、どことなくほほえましい。
フェイスブックにも、社員の入社記念日を祝う慣習がある。その名は「Faceversaries」。同社日本オフィス広報の嶋田容子さんは言う。