タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【写真】気候行動サミットの会場で演説するグレタ・トゥンベリさん
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「若者は政治に無関心」は世界中でこれまで散々言い古されてきました。でも、気候危機問題に関して言えば、その認識は的外れです。若者は政治を退屈ともダサいとも思っていません。本気で怒っています。口ばかりで具体的な対策をとってこなかった政治家たちの怠慢に対して「今すぐ行動せよ」と、数百万人もの若者や子どもたちが行動を起こしているのです。
昨年8月、当時15歳のスウェーデンのグレタ・トゥンベリさんは、政府に対してパリ協定を順守してCO2の排出削減に取り組むよう求め、たった一人で抗議行動を始めました。やがて世界各地の子どもたちが彼女の呼びかけに応えて、毎週金曜日に気候危機対策を訴えるデモを始めました。このまま現状を放置したら地球環境は後戻り不可能になり、飢えや紛争で人類存続の危機が訪れると。
運動はさらに広がり、今年9月20日には大人も含めて世界で400万人もの人がデモに参加。ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットではグテーレス国連事務総長が参加国に具体的な対策をと強く訴え、グレタさんが怒りを込めて演説をしました。かねて気候危機に警鐘を鳴らしているローマ法王もビデオメッセージを寄せています。
日本は先進7カ国で唯一、大量のCO2を排出する石炭火力発電所を増やし続けており、厳しい目が向けられています。小泉環境大臣の「若者が鍵だからクールに楽しくセクシーに」が問題なのは、若者たちの怒りの真剣さを認識していない発言だからです。またさらに問題なのは「今後半年から1年で(石炭火力発電を減らすために)何をするのか」という記者の質問にもまともに答えられなかったことです。メディアは単なる進次郎叩きに終始せず、気候危機問題で日本政府がどう行動するのかを追及して詳しく報じてほしいです。
※AERA 2019年10月7日号