

食べられるのに廃棄される食品は国内で年間約600万トンにのぼる。この課題に繊維商社が廃棄食材の「色」に着目し、挑む。野菜やコーヒーなどで染めた服やスニーカーは人々にどう響くか。
【写真】コーヒーの出がらしやハーブティーなどから染色したコンバースがこちら
* * *
今年5月、愛知県に暮らす都築里帆さん(26)はFOOD TEXTILE(フードテキスタイル)の商品を初めて買った。Tシャツとショッピングバッグだ。
「Tシャツの色はハーブティーのブルーマロウ。ショッピングバッグはブルーベリーにするか、コーヒーのブラウンにするか少し迷いました。インスタで見たのと変わらない、ナチュラルな天然色に満足しています」(都築さん)
フードテキスタイルとは、繊維商社・豊島が手がけるアパレル業界発の食品ロス削減プロジェクトだ。カット野菜の切れ端や形がふぞろいな規格外品など、従来廃棄されている食材を食品会社や農園から買い取り、食材の色素を染料にして再活用する。都築さんが購入した商品も、廃棄予定だったハーブティーやブルーベリーなどから染色した。価格はTシャツが税別5800円とけっして安くはない。
が、都築さんは言う。
「Tシャツはファストファッションで安く買う方法もあります。でも、同じ買うのであれば、少し高くても、食品ロスとかにちょっとでも貢献できる一枚のほうがいいなと私は思います」(都築さん)
フードテキスタイルがたちあがったのは4年前。豊島の谷村佳宏さん(35)がキユーピーのCSR部の社員と出会ったのがきっかけだ。食品会社では、食材の切れ端などの廃棄物が大量に出る。その活用が課題だと聞いた。一方、谷村さんは価格競争で先細るアパレル業界に、何か新しい機軸が必要だと考えていた。
そこで食材の「色」に着目し、再活用の道を探った。しかし、トマトから抽出された色は「赤」ではなく「黄色」になるなど、一般的なイメージと一致しないケースもあった。化学染料のように長期保存できない課題にも直面。試行錯誤を重ねた。