タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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「感情的になって、一部の人だけが優遇されるような制度を国会議員が作るのは大問題」と日本維新の会代表の松井一郎・大阪市長。れいわ新選組の木村英子議員と舩後靖彦議員の介助費を参院が負担することを批判しました。
大型車いすで生活し、常時介護が必要な舩後さんと木村さんは、公費負担のある重度訪問介護という制度を使っています。厚生労働省の規定では通勤や職場での活動には適用されないため、全額自費か、事業主が負担することになります。これでは介助が必要な人が働けるのは余裕のある企業に限られてしまうため、「職場での負担も公費負担にするべきだ」とれいわは訴えています。
松井市長の「制度全体に適用されるのではなく国会議員にだけ公費が支給されるのは不公平」という批判に賛同する人もいます。でも私はそうは思いません。
国会で起きることは国じゅうに周知されます。国会での介助費の公費負担はハンディキャップのある人も議員として同じスタートに立てるようにする措置。他の職場でも同じですよね。これが先鞭(せんべん)となって、制度全体が変わることを期待する当事者や関係者も多いでしょう。身をもって前例を作ってバリアフリー社会の実現を目指すのは、国会議員だからこそできることでもあります。報道でも盛んに取り上げるので議論も広がります。私も重い障害のある人が働くことについて、今回の一件までよく知りませんでした。
議員だってそうです。れいわのお二人や、岩手から当選した車いすを使用する横沢高徳議員と国会で一緒に過ごして、いろんな発見があるはずです。これをきっかけにバリアフリーについて理解を深める議員もいるでしょう。知識で知っているのと体験するのは全然違う。「そこにいる」って、すごく大事なことだと思います。
※AERA 2019年8月12・19日合併増大号