経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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例の金融庁の金融審議会の報告書問題。95歳まで生きるには夫婦で2千万円必要、というのが物議を醸しました、一方で60歳の人の25%が、貯金額100万円以下だという報道もありました。
ぐっちーが1960年生まれだから、これはまさに同世代の話です。60歳にもなって2千万円必要と言われ、じっと手を見て100万円もない……というのはあまりにも哀しい。石川啄木も涙しそうな話じゃないですか。
この世代に預金がない理由はただ一つ、バブル期を20代後半で迎え、まだ微塵も終身雇用が疑われていない時期に、最高35年ローンでがっつり家を買ったことに尽きるでしょう。ぐっちーは日本で家を買おうと思わなかったので、おかげさまで貯金は(これだけ酷い野放図な生活をしていたのに)そこそこ残っている。唯一そこの違いです。
残ったのは半値以下になり流動性もなくなった辺鄙な郊外の自宅とローンだけという悲惨な結末。自己責任なんだから仕方ないという声もありますが、僕はこれこそ金融犯罪に近いと思っています。30年後の不動産価値なんて全くわからないはずなのに「不動産価格は絶対上がります、ローンの支払いも大丈夫です!」なんて言って貸す方がどうかしている。あまりにもモラルを逸脱していると思う。
危惧しているのが、この金融犯罪が繰り返されること。すでに2千万円という数字は独り歩きを始め、各金融機関とも投資商品の勧誘にすごい力を入れ始めた。早く運用しないと足りませんよ。60歳で100万円!? 早く早く!という悪魔の囁きが聞こえます。
仮に預金が100万円もないのなら、絶対に運用なんてしてはいけません!! 何が良くて何が悪いということはありません。全部だめです!