今回のイベントは午前8時から午後5時半までの長丁場。4月とはいえ、昼過ぎには気温が25度を超えた。この陽気でひたすらごみ拾いとなれば、まったく骨が折れる。「大多数の人は、海岸清掃は苦行だと思ってやりたがらない」(巫さん)というのも分かる。しかし、会場では、司会者が軽快なノリで「ボートづくりスタート!」と叫んだりしながら雰囲気を盛り上げていく。

「熱青年Showハ(※ハは口偏に巴)」チームは、およそ千本のペットボトルをボートにした。同チームは若者によるさまざまなチャレンジを番組にしてインターネットで配信しており、今回のイベントでも番組を制作した。羅珮綺(ルオペイチ)ディレクターは「変わった方法で環境問題をアピールするイベントだと思う。その様子を映像化し、海岸漂着ごみについて伝えたい」と話す。

 お昼には、ホタルイカなど地元の食材でつくったお弁当が準備され、器にはリユースできるお椀を使用。プラスチックを使わないことをアピールするTシャツのDIYコーナーも開設した。イベント参加グッズを参加者が自分で作れば、余計に準備してしまって処分に困るということもない。ごみを出さないことにこだわった工夫だ。

 海岸漂着ごみ問題では、日本や台湾、中国が連携して解決の機運を高めようという動きもある。沖縄県が14年度から毎年、各地のNGOなどを招いて交流会を開いているのだ。

 前出の山口氏の調査によると、沖縄の海岸漂着ごみは近年、中国製が急増する一方、台湾製も毎年、調査地点の海岸線1キロメートル当たり平均300個余り確認されている。

「澎湖では、海岸漂着ごみの問題は中国の問題だという受け止めがあるが、台湾のごみが沖縄に流れ着いていることを知れば、問題が地球規模だということに気付く」

 と巫さん。さらに、「台湾は、数多くの問題が中国側と意思疎通できない状態」とも述べ、問題解決に向けた協議で日本が台湾と中国の仲介役を果たすよう期待した。(ライター・松田良孝)

AERA 2019年5月20日号より抜粋

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