ショーケンが死んだ。
【「太陽に吠えろ」で放送作家協会の演技賞を受賞したころのショーケンはこちら】
マカロニが死んだときも「うそだろ?」と思った。だが、あのときほどは、じつは驚いていない。ショーケンなら、こういう消え方をするんじゃないか。そういう覚悟というか、諦めでしょうね、どこかにあったのだろう。
ある年代以上なら、マカロニ刑事を知らない男の子はいない。人気刑事ドラマ「太陽にほえろ!」の主人公で、ショーケンこと、萩原健一が演じていた。まっ白なスーツに、幅広の開襟シャツ。1970年代黒人ソウルシンガーぐらいしか似合わないような、あり得ないファッション。その主人公が、チンピラに刺され、劇中、あっけなく死んでしまう。
「うそだろ?」。テレビにかじりついていたわたしら男3人兄弟は、なにが起きたのかわからず、あっけにとられた。主人公が劇中で死ぬテレビドラマなんて、当時、ありえなかった。ショーケン本人による演出だったという。
ショーケンがしてきたことは、「ありえない」ことの連続だった。
67年、ザ・テンプターズでデビュー(しかも、最初はメインボーカルの代役だった)。グループサウンズ全盛時で「エメラルドの伝説」「神様お願い!」がヒット、ザ・タイガースの沢田研二と人気を二分した。しかしバンドがいやになり、自分から新聞記者にテンプターズの解散をリークする。「そうでもしなきゃ辞められなかった」と、のちに語った。ありえねえよ。
そのあと、沢田とスーパーバンドPYGを結成する。ジュリーとショーケンのツインボーカルに、ザ・スパイダースの井上堯之(ギター)、同じく大野克夫(キーボード)、テンプターズの大口広司(ドラムズ)、タイガースの岸部一徳(ベース)。どんだけありえないメンバーなんだ。海外で言ったら、ジョン・レノンとミック・ジャガーのツインボーカルに、ジェフ・ベックのギター、スティービー・ワンダーのキーボード、キース・ムーンがドラムに座って岸部一徳がベースを弾く、みたいな。
「ジュリーで1万人、ショーケンで1万人の客を呼べる」という前評判だったが、ライブのふたを開けてみると客は200人。ショーケンとジュリーのファン同士がけんかして、ショーケンも客とけんかするという、ありえない結末で、すぐ消えた。