帰国後、日本に住む外国人が増えているのを肌で感じ、これからの日本の社会は、今まで以上に「多様な人たち」に寛容にならなくては、と思った。肌や目の色が違うといったことに加え、見た目ではわからないセクシュアリティーも含めた多様性への理解が深まり、豊かな社会になれば、という思いが撮影へとつながった。

 日本では、日本と日本以外の国籍の両親を持つ子どもを、「ハーフ」や「ダブル」と呼ぶことが多いようだが、文化的・人種的ルーツが複雑な彼らに出会い、この言い方に疑問を感じるようになった。

 F.R.(25)はプエルトリコ系アメリカ人の父親と日本人の母親を持つ。話す時はいつも笑顔で、チャーミングな彼女。「アメリカ人と日本人のハーフと言われてもピンとこなくて」と、違和感を語ってくれた。

「自分のルーツを調べた時に、プエルトリコ系の血が入っていると初めて聞かされました。“どちらでもいいよ”とあいまいな答え方をしてしまう時、“自分は日本人”だと思いますが、同時にラテンのルーツも意識しています。ハーフとしてではなく、もっと一人の人間として見てもらえる世の中になればいいのにな」

 ハグをしそうになったり、リアクションがオーバーだったり、感情表現が周囲と違うことを悩んだ時期もあった。だが、ラテンのルーツを知って人との違いにも納得がいき、気持ちが楽になったという。アイデンティティーを形成する際、ルーツを再認識することで新たな自分が見えてくることもあるのだ。

 米系3世の倉臼沙羅(24)は、両親ともにドイツ系アメリカ人。祖父母がキリスト教の宣教師として日本に移り住んだ。青い目に、薄いブルーのワンピースがよく似合う。

「アイデンティティーは日本人です。日本で生まれ育ち、幼稚園の頃から日本の教育を受けてきたし、言動も日本人。アメリカっぽいところと言えば、パスポートくらいです」

 歴史が大好きで、今は都内の小学校でクラス担任をしている。

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