さまざまな文化的・人種的バックグラウンドを持つ彼らだが、日本が故郷であり祖国ということに変わりはない。

 しかし、肌や髪の毛の色など外見で目立ってしまったり、考え方や習慣、表現の違いで「日本人らしくない」ことがあると受け入れられなかったり、成長する過程で悩み、葛藤する人が多いように思う。

 アメリカ人の父親と日本人の母を持つ鈴木秀成(ひでしげ=29)。ブロンド交じりの髪にすらっと背が高いところは父親譲りだそうだ。ヘーゼルカラーの目は、角度によって色が変わる。生まれ育った茨城のなまりが今もときどき出てしまうという。

「時には疎まれ、蔑まれて、羨ましがられ……僕にとって日本は、決して生きやすいと一言では言えない国。葛藤を感じるけれど、家族がそばにいてくれる場所でもあります。外見で判断されるのは仕方ないけれど、仕事ぶりで僕を見てもらいたい」

 4姉妹の次女として元気いっぱいに育ったF.T.(26)は、パキスタン人の父親と日本人の母親を持つ。幼い頃から日本とパキスタンなどを行き来して国際的な感覚を身につけて育った。ムスリムとして生活していた小学生の頃、給食で豚肉が出ると食べられず、同じようなお弁当を母親が作ってくれていた。けれど、先生もあまり理解を示さず、寂しい思いをしたという。

「日本は大好きな国。だけど、自分が普通と思っていることも珍しく思われて、疲れるときも多々ある。パキスタン人と日本人の間に生まれたことを憎んだこともある。けれど、いろんな経験をしてきたからこそ、今は楽しんで生活できている」

 現在はジャマイカに住み、アートセラピストとして活動している。

 自分のルーツの一部に日本があり、さらに親から受け継いだ多様なルーツを誇りに思う気持ち。その一方で、日本社会の中で感じる複雑な気持ち。きょうだいでも感じ方は違う。葛藤しつつ、幼い頃から自分の個性と正面から向き合い、アイデンティティーを築いてきた精神的な強さがある。カメラの前に立ってくれた彼らと話し、そう感じた。

 人はそもそもみんな違う。違いを見つけて隅に追いやったり、均質さを求めたりするのではなく、互いの個性を認めて尊重し、自立して暮らせるような社会になればいい。撮影を続けてきて思うのは、比べることより、「自分自身であり続けること」が大切だということ。ファインダーを通して、彼らが教えてくれた。(文中敬称略)(フォトグラファー・葛西亜理沙)

AERA 2019年2月25日号

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