ウクライナ戦争から1年、欧米諸国で「支援疲れ」が広がっているという。ウクライナ支援の世論の変化について、三牧聖子・同志社大学大学院准教授に聞いた。AERA 2023年2月27日号の記事を紹介する。
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開戦から1年。ウクライナを支えてきたのは欧米や西側諸国からの支援です。なかでも突出しているのは米国で、昨年末までに全体の4割にあたる約480億ユーロ(約6兆9千億円)を支出しています。
バイデン米大統領は2月7日の一般教書演説で「(米国が)NATO(北大西洋条約機構)を結束させ、世界的な連携を構築した」と主導的な役割を強調しました。
ですが、今後については「これからも支援する」という抽象的な言葉にとどまりました。米領空内に飛来した中国の気球を米軍が撃墜した直後だったせいもありますが、ウクライナへの言及はわずかなものでした。そこに米国内の世論のほころびが透けて見えます。
1月末の米国の世論調査によると、国民全体で「ウクライナに資金と武器の支援をすべきだ」と答えた人は6割を超えています。しかし、支持政党別でみると、民主党支持者は8割が支援を「続けるべきだ」と回答した一方で、共和党支持者と無党派層はそれぞれ5割にとどまり、実に3割の開きがありました。さらに現在の米国のウクライナ支援が適正かどうかについては共和党支持者の5割が「やりすぎている」と回答しています。
現在、米国では食糧とエネルギー危機が進行しています。インフレも深刻です。この状態が続けば、ウクライナ支援を批判する声は共和党支持者を中心に大きくなると考えられます。昨秋の中間選挙では、下院で野党の共和党が過半数を獲得。盤石とはいえないバイデン政権において、その声は無視できないものになるでしょう。
ここまで長期化するという覚悟のなかった戦争を前にした「支援疲れ」は、欧州諸国にも広がっていると思われます。その声が大きくなった時、ウクライナが望まない形での停戦、つまり領土の一部をロシアが占領している状況であっても戦争を終わらせる道を模索する動きが生まれることは、大いにあり得ると思います。