
人は大昔から怒りをコントロールする術を探し求めてきた。クツカム! 秋田犬! いろいろあるものだ。実際に使ってみた。
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ネットでこんなワードがバズったのは、春ごろのことだ。その名も「ゴリラの術」。漫画家でイラストレーターの阿東里枝(あとうりえ)さんがネットで発表した自作漫画のことをいう。正式な作品タイトルは「腹が立った時落ち着けるオススメの方法がある それがゴリラの術である」。生きていると腹が立つことがあるけど、そんなときは「ゴリラになれ」と説く短編漫画だ。
「ゴリラは争いを好まない。(なぜなら)強いから。ゴリラは他者を傷つけない。(なぜなら)強いから……」
そんなセリフのあと、やたら男前のゴリラが「ウホホホウホホ……」とゴリラ語で静かに何やらつぶやいているところがアップになる。要はそんなゴリラマインドを見習うことが、怒りを葬る「ゴリラの術」っていうことらしい。
作者の阿東さんによれば、きっかけはこうだった。
「以前ニュースサイトで手話をするゴリラの話を見かけて、ゴリラに興味を持つようになりました。当時、ムカつくできごとがあったのですが、その怒りをどうしたものかと。SNSには書き込めないし、物に当たるのもカッコ悪い。自分の中で消化するしかない。でも腹が立つ。どうしよう……そうだ。ゴリラになろうと」
術の効果は絶大だった。人間関係で自分から衝突することがなくなった。
「反響は自分でも驚くほど大きかったです。『ゴリラの術で心が楽になりました』と、メッセージをいただいたこともうれしかったです」(阿東さん)
怒りをコントロールするアンガーマネジメントが流行しているのは、ケンカ上等のネットの世界でも同じみたいで。そういう自分も、最近とみに、泉のように湧き出る怒りの御し方に戸惑うことが増えた。
若い頃は人に食ってかかったとしても、「正直で元気な女の子」というポジティブな評価をいただいていたもの。ところがいつからか同じように怒りの爆発をやらかすと、「野菜が足りてないのでは?」だの、「ダンナとうまくいってないからだろう」だの、勝手な理由をつけられて、モンスター扱いに。