米須さんは、知事選で問われたのは「沖縄とヤマト(本土)の関係」だと感じている。

「このままでいいのかと考えざるを得ない状況に追い込んだのはヤマトの側です」

 政権が推す佐喜真淳氏に投票した人でも、新基地を望む人は少ない、と考えている。

「沖縄で積極的に基地を肯定する人は一握りです。そのことを沖縄の人は互いにわかっているから、今後も分断されることはありません」(米須さん)

 分断は沖縄内部ではなく、基地問題解決の壁となって立ちはだかる本土との間にある。

 米須さんの陳情行動には「ネタ本」がある。全国の議会への陳情を提唱する『沖縄発 新しい提案』だ。5月にボーダーインクが出版。中心になって執筆した那覇市在住の司法書士、安里長従さん(46)はこう話す。

「多くの県民が感じている怒りを、スローガンではなく、できる限り理性的な言葉で論理的に説明したのが本書です。多くの市町村で陳情が採択されれば、『辺野古が唯一』という政府のロジックは使えなくなります」

 憲法で保障された権利や民主主義の原則が、沖縄では適用されていない。この不満は職業や年代を超えて共有されている。知事選で問われたのは、こうした「沖縄と本土の自由の格差」だと安里さんは言う。

「基地や貧困、教育はこれまで別々の問題だと認識されていましたが、『沖縄の自由が奪われている』ことが根本要因だと認識されるようになりました」

 こうした認識が県民の間にどれだけ浸透したのか。それが知事選の結果に反映される、と安里さんは見る。(編集部・渡辺豪)

AERA 2018年10月7日号

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