持続可能な社会を支持する投機マネーも呼び込んで、欧州発の脱プラスチック」のムーブメントが日本上陸。使い捨ての便利な暮らしをいま見直す時にきている。
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2020年までに自社で使用している年間10 億本ものプラスチックストローを全廃する。世界のコーヒー市場を牽引する米スターバックスの7月9日の発表をはじめ、大手ハンバーガーチェーン・米マクドナルドなど外食産業の現場でプラスチック製品撤廃の動きが加速している。
日本国内でもガストやバーミヤン、ジョナサンなどのファミリーレストランを展開する、すかいらーくホールディングスが、やはり20年の東京オリンピックまでに原則廃止を発表。こうした動きは外食産業だけではなく、世界最大の家具量販店、スウェーデンのイケアやディズニーパークを運営する米ウォルト・ディズニー・カンパニーにも波及している。
しかし、「脱プラ」の動きは決して新しい出来事ではない。およそ100年前にプラスチック(合成樹脂)が誕生して以降、世界の環境団体は、その都度、プラスチック汚染の現状に警鐘を鳴らしてきた。
世界36カ国で発行されている科学雑誌「ナショナルジオグラフィック」は、今年6月「海を脅かすプラスチック 漂うレジ袋は氷山の一角」という特集号を出版。日本版編集長・大塚茂夫さんはこれまでプラスチック問題は、日本人には遠い国で起きている出来事で関心は薄かったと語る。
「今やプラスチックの海洋汚染は日本でも起きていて、先日も関東の海岸に打ち上げられたクジラの胃から、プラスチック片が見つかり話題になりました。日本は世界有数のプラスチック大国であり、使い捨ての便利な暮らしの恩恵を受けている当事者だと、ようやく気がつき始めたのだと思います」
しかし、今回の「脱プラ」のムーブメントの特徴は、環境問題に関心のある草の根の人々が中心となったボトムアップ型ではなく、世界経済を牽引するグローバル企業による、市場を巻き込んだトップダウン型にある。国際環境NGOグリーンピース・ジャパン・プログラム部キャンペーナー・石原謙治さんは、これまでも国連など国際会議の場でプラスチックの脅威について何度も話し合われてきたが、契機になったのは昨年1月に行われた世界経済フォーラム(ダボス会議)だと語る。