「断られたときにそれを受け止められなかったり、NOに気づかなかったり、『押せばなんとかなる』と何度もアプローチしたりするのは問題ですが、思いを伝える行為は恋愛には必要です。それをハラスメントとは言いません」

 一方、評論家の勝部元気さんは「告ハラという言葉が適切かどうかは別として」と前置きしつつ、こう話す。

「恋愛とは、ステップ・バイ・ステップで小さく段階的に進めていくものです。しかし、自分の内側で気持ちを高ぶらせ、突然それをぶつけると、相手には突発的な行動だと映ってしまいます。それは、ある意味ハラスメントと言えるでしょう」

 とはいえ、それが恋愛の障害にはならないという。

「そもそも、告白のない恋愛のほうがグローバルスタンダードです。徐々に関係性を深め、“気がついたら付き合っている”のが自然な流れでしょう」

タツロウさんのケースでいえば、相手を褒めること、そして自分の感情を自然な口調でこまめに伝えることが大切だという。

「“今日は一緒に◯◯できて幸せだった”“◯◯が笑顔になってくれて僕もうれしい”など、『好意のキャッチボール』で使用できるボキャブラリーを増やしていきましょう。相手が同じ熱量の言葉を返してくれれば、関係は少しずつ深まっていくはずです」(勝部さん)

「告ハラ」についての認識は専門家でも異なるし、受け取る側の意識も一様ではない。とはいえ、セクハラと恋愛がまったく別のものであることは、金子さん・勝部さんともに口をそろえる。「セクハラが怖くて恋愛できない」は、萎縮する男性たちの誤解だ。相手の意思を推し量りながら、「ダメならば引く」ことを忘れなければ、恋愛とセクハラが重なりあうことはない。セクハラを理解し、過剰に恐れないこと。セクハラを許さないという昨今の社会の風潮は、決して恋愛の障壁ではない。

 最後に、勝部さんはこうも指南する。

「あなたしかいないと気持ちが舞い上がると、段階を飛ばして突っ込んでしまいがち。強引なアプローチはNGです。ならば、むしろチャラくなること。自分に合った相手を見つけるために間口を広げて、いろんな女性を気軽に誘ったっていいと思う」

(文中カタカナ名は仮名)(編集部・川口穣)

AERA 2018年7月30日号より抜粋

著者プロフィールを見る
川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

川口穣の記事一覧はこちら