「直観力で“この人は安全”と判断しているわけですが、そういう直観は自然を相手に鍛えられたものです。自然という、コントロールできない、何が起きるかわからない世界で感受性を研ぎ澄ませ、危険に対処し、そのことが生きる喜びにつながっていました。ところが現代は、インターネットやSNSなどアタマだけでつながっているから、言葉の暴力がはびこり始めています」

 ではこの先、我々はどうしたらいいのだろうか。

「都市生活者は、自然に近い場所にもう一つ拠点を持ち、両方を行き来すればいい。都会に自然を復元するのはもう無理です。我々が自然に入っていく所でないといけません。幸い、日本は大規模な農業や牧畜をやってこなかったおかげで、自然はまだまだたくさん残っています」

 アフリカのジャングルで暮らし、今は京都大学総長を務める山極さんに、最後に東京の印象を聞いてみた。

「京都に帰ると正直、ホッとします。東京は……。ちょっと空気が薄い気がするな(笑)」

(ライター・北條一浩)

AERA 2018年7月30日号

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