加藤貴子(かとう・たかこ)/1970年生まれ。TBS系ドラマ「温泉へ行こう」シリーズに主演。2014年に長男、17年に次男を出産。著書に『大人の授かりBOOK』(撮影/写真部・片山菜緒子)
加藤貴子(かとう・たかこ)/1970年生まれ。TBS系ドラマ「温泉へ行こう」シリーズに主演。2014年に長男、17年に次男を出産。著書に『大人の授かりBOOK』(撮影/写真部・片山菜緒子)

 42歳で不妊治療を始め、2児を授かった女優の加藤貴子さん。妊活クライシスを乗り越え母親になった加藤さんは、妊活の裏側についてこう語る。

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 47歳で、乳飲み子をおんぶしながら3歳児と格闘するとは思っていませんでした(笑)。

 子どもが欲しいと思っていましたが8年経っても授からず、42歳で不妊治療を始めました。その少し前に、NHKの番組で卵子が老化することを知り、不妊治療専門のクリニックでも、37歳を過ぎると急激に妊娠しづらくなることなどを聞きました。20代、30代は仕事盛りで、健康で生理があればいつでも産めると思い込んでいた。無知な自分を責めました。

 不妊治療は必ずしも努力が報われるわけじゃない。不妊治療の一番の敵はストレス。そう思っても、頭に浮かぶのは不安や後悔ばかり。赤ちゃんを抱いている女性を見て嫉妬心がわき、そんな自分を嫌悪していました。

 四つ年上の夫に男性不妊も発覚しました。でも時間を工面して毎日のように病院に通うのも、痛い思いをするのも私。一度爆発してありったけの暴言を夫にぶつけ、夫婦仲の「妊活クライシス」に陥ったこともあります。その時夫に私の本気度が伝わって、その後はどんな泣き言にも寄り添ってくれました。

 2度目の流産の後、1週間ほど家から出られなくなったとき、仕事中の夫が「きれいな月が出てるよ」と電話をくれました。外に出ると大きな満月が。見ているうちに涙があふれてきました。初めて自分の感情と向き合えました。その後は自分を口に出して褒めるようにしたら、ネガティブな感情にとらわれる時間がだいぶ減りました。

 3度の流産の後、不育症専門医のもとにも通い、薬を服用しながらようやく出産できました。長男が1歳3カ月の頃、不妊治療を再開。長男は、子宮に着床したときは双子でしたが、もう一人の子が育たなくなってしまって。その時約束していたんです。「私のもとに来てくれてありがとう。あなたに会えるチャンスをもう一度つくるね」と。 高齢出産で親との別れも早いだろうから、きょうだいをつくってあげたいとも思いました。

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