歌番組での共演をきっかけに、リリー・フランキーがミッツ・マングローブ率いる星屑スキャットのファーストアルバム「化粧室」の「新宿シャンソン」で作詞を手がけた。2人が曲の誕生背景や想いなどを語る
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ミッツ・マングローブ(以下ミッツ):本当に難しい曲なんですけど、歌えば歌うほど、私の中で感情がなくなっていくんです。最初の頃は歌の主人公になろうとか、テーマをしっかりお届けしますって歌ってたんですけど、今はもう「お客様のもの」という感覚ですね。なるべくしてなった大衆の歌だし、私たちの曲のようだけど、絶対にそうじゃないんです。
リリー・フランキー(以下、リリー):「新宿シャンソン」というレット・イット・ビー的な曲はあっても、星屑スキャットが、ライブが中心の音楽ユニットという土台は変わらない。そこはディスク1に入っている曲が支えると思う。
ミッツ:「新宿シャンソン」は、人それぞれの噛(か)みしめ方で聞いてもらえれば。現実とファンタジーの狭間みたいなものを感じてほしいんです。新宿にある種の幻想を抱いている人だけじゃなくて、地方の人にも聞いてもらいたいです。
リリー:沖縄の窓を開けっぱなしでやってるスナックから聞こえてきたりとかね。
ミッツ:身を粉にして働いている昼の人たちにも夜の人たちにも。「ファンタジーなんて」と思っている人にもカルチャーを感じてもらえる曲ですし。
リリー:「新宿シャンソン」の主人公は、もともとAERA的読者がイメージですから。気位が高くて、振られたことを認められない女の歌っていう(笑)。