日大アメフト部の悪質タックルの問題や、国会で論争が続く森友学園・加計学園問題など、真実がなかなか明らかにならない事件が続いている。背景には、根深い権威主義があるようだ。
事実が軽視され、虚偽が重ねられていく。それはおそらく、権力者側の都合で。
5月28日、安倍首相は、「伝聞の伝聞」として、加計学園に関する愛媛文書の内容を否定した。
「愛媛文書は3人の担当者による記録文書です。反証もなく、『そうではない』という強弁がまかり通る。異常です」
そう前文部科学事務次官の前川喜平さんは言う。
「権力は長期化すれば腐敗する。モリカケ問題は、つまりは政権の縁故主義の疑いです。性的暴行疑惑で逮捕状まで出ていたとされる山口敬之氏の不起訴処分を見ると、縁故主義が検察・警察まで及んでいる疑いがあります。行政のみならず、国家機構全体に権力に抗えない構図が生まれつつあるのでは」(前川さん)
戦史研究家で『戦前回帰「大日本病」の再発』の著書がある山崎雅弘さんは、社会に蔓延する権威主義を指摘する。
「権威主義とは、立場が上の者の意向に従うこと。上位者の意向と自身の判断が異なる場合、どちらを優先するかで人は葛藤します。しかし、上位者の権威が過剰になると、『個人の意思』が失われ、従う以外選択できない状態に陥ります。権威が人の認識を歪ませる事例は、社会のあちこちに出ています」
日本大学アメフト部の悪質タックル問題では、加害選手の会見内容と、日大の内田正人前監督、井上奨前コーチの会見内容が対立した。後日日大学長が行った会見は、前監督らの言い分を支持する内容だった。前監督が常務理事であり、組織内でナンバー2の権力者であったことも注目された。加害選手にアメフト部から聞き取り調査が行われなかったことも、会見時、代理人弁護士から明かされた。
「組織の上位者を守ることを優先し、下の者は切り捨て、事実を明らかにする気がない。権威主義の典型的な例だと思います」(山崎さん)
権威主義は、いつから社会にはびこるようになったのか。