子づくりのための性行為での悩み(AERA 2018年5月28日号より)
子づくりのための性行為での悩み(AERA 2018年5月28日号より)
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「子づくり」と「セックス」。本来自然に結びついていたはずなのに、夫婦間でのバランスが崩れると、途端に「させてあげる」「してあげる」という奉仕作業に変わってしまう。心から満たしあえるはずのセックスは、なぜ形を変えてしまうのか。

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 午前3時。飲み会から帰宅したタカシさん(39)がベッドに潜り込むと、隣で眠っていたと思っていた妻がそっと近づき、耳元でこうささやいた。

「パパ、今日なんじゃない?」

 数カ月前から始めた妊活。普段は、タカシさんが妻の生理日から排卵のタイミングを予測して挑んでいた。が、その日はうっかりしていたのだ。妻もベッドで待つ間、じりじりしていたに違いない。妻に詫びつつ、心と身体をスタンバイする。悪いと思いながらも、脳内でお気に入りのAVを“フル再生”した。

「自分は種馬。快楽のセックスとは別モノです」(タカシさん)

「子づくり」と「セックス」――。本来ごく自然に結びついていたはずなのに、なぜかうまくいかない。最近では、排卵のタイミングに合わせたセックスが男性のストレスとなり発症する「タイミングED」という言葉も聞く。今年放送された妊活を題材にしたドラマ「隣の家族は青く見える」でも、ついプレッシャーをかけてしまう妻と、緊張して不調に陥る夫の苦悩が描かれ話題になった。

 事態がさらに複雑化するのは、夫婦間で「子どもが欲しい」という思いと、性欲の強さの均衡が崩れた場合だ。

 35歳の時に結婚した、マサトさん(41)の同い年の妻は「子どもがいなくてもいい派」。その上、元々性欲があまりなかった。一方、マサトさんは、子どもも欲しいし、セックスもしたいタイプ。妻はマサトさんの思いに応え、市販の排卵検査薬を使ってくれていた。ただ、一筋縄ではいかなかった。

「『今日はきついな』という日に限ってドンピシャだったり……。したいなという時も、『排卵日前は1週間禁欲したほうがいい』とか、逆に『あまりためずフレッシュな方がいい』とか、噂にも振り回されました」(マサトさん)

 妊活は2年に及んだ。長引くにつれ、元々子づくりに消極的な妻は「もういいんじゃない?」と、テンションが下がり気味に。仕事で疲れて帰ってくる妻に無理強いするのも申し訳ない。それでも……と、何とか盛り上げて挑む。何度も、くじけそうになった。

 妥協点として見いだされたのが、お互いに元気で、時間も取れる休日の朝だ。これが幸いし、無事妊娠が分かった時は「心底ほっとした」という。(文中カタカナ名は仮名)(編集部・市岡ひかり

AERA 2018年5月28日号より抜粋