マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
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世間は双児用に作られていない(※写真はイメージ)
世間は双児用に作られていない(※写真はイメージ)

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の新連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

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 賢明なAERA読者に見透かされるようなことはしたくない。“おじさんが産んでおじさんが消費”するコラム、そんなおじさんのパラダイスをイメージして書いていくことにしよう。

 我が家には4人の子供がいる。16歳(女子)、11歳(女子)、3歳(男子双児)というバリエーション。こんなに沢山の子供を持つとは思ってもみなかった。自分の無計画ぶりには呆れる。今回は双子の育児について告白したい。

 生後もう3年経つがいまだに慣れない。

 ところで子供というものは恐ろしいもので、大の大人がキスをせずにはいられないようなフォルムをあらかじめしている。だから私もご多分にもれずする。

 しかし私は至(いた)って冷静だ。完全に心を奪われているわけではない。仕事のことを忘れたりするようなことはないし、妻をこれ以上怒らせないようにそっとスマホを閉じ、洗い物をしてあげようと考えるのだし、娘との距離感を縮めるために防弾少年団のMVを一緒に見ることだって忘れないし、大好きなグラビアアイドル小倉優香ちゃんのことも考えている。

 それにしても双児がやかましい。私が何をしたというのか、私の行く手の邪魔しかしない。落ち着いて晩酌もできない。さっさと寝てもらって、一人になりたいし、だいいち、家族が起きている間はあんなことやこんなこともできやしない。

 双児を生んで気付かされたことに、「世間は双児用に作られていない」というものがある。

 階段の昇降をするにも、双児用のベビーカーはそれ自体で重く、2人分の体重が積載されるわけで、移動する場合はエレベーターを使用するのがパターン。

 が、そこまでの動線は遠回りになることが多い、つまりその時間を想定して移動時間を計算しなければならない。で、ようやく着いたと思ったら今度はエレベーターの間口が狭く並列式のベビーカーが入らないなんて悲劇が起こる。コンビニも、スーパーも、ファストフード店や、ちょっと可愛らしい雑貨屋などなど、入り口という入り口のほとんどは双児用に作られていない。双児連れの私が不意に可愛らしい雑貨が欲しくなったらどうするのだ。

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