せばた・はじめ/1976年、東京都生まれ。長野県短期大学准教授。専門は日本近現代政治史。著書に『公文書をつかう』『公文書問題』ほか(撮影/編集部・小柳暁子)
せばた・はじめ/1976年、東京都生まれ。長野県短期大学准教授。専門は日本近現代政治史。著書に『公文書をつかう』『公文書問題』ほか(撮影/編集部・小柳暁子)
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 財務省による公文書の改竄や口裏合わせなどが次々と発覚した森友学園問題。公文書管理の歴史に詳しい瀬畑源さんは、改竄について「官僚というものの存立基盤を崩すこと」だと指摘する。

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 2011年に公文書管理法が施行されるまで、政府には公文書の取り扱いを具体的に定めた法的な統一ルールはなく、各省庁に任されていました。自分たちに必要なものは残す、そうでないものは残さないというのが当たり前だった。終戦時に大量の文書が焼却されたのも、その発想から来ています。公務員の立場が戦後「全体の奉仕者」に変わったのに、その意識は変わりませんでした。

 政権交代がある国なら相互チェックが働き、政権交代後に情報が公開される可能性があるので日頃から情報の出し方を考えますが、日本では自民党の「一党支配」が続いており、国民の側も自民党に任せておけばいいという意識。そうなると自民党と官僚の間で情報を独占する仕組みになってしまいます。情報は権力の源ですから、権力を持っている側は情報を出したくないというインセンティブがどうしても働くのです。01年の情報公開法施行後は、不開示の規定が適用されるもの以外は、請求されたら原則的に出さなければいけなくなりました。そうすると、あるものは出さなければならないので「出したくないものは作らない」ということになっていった。作っても「私的メモであって、組織としては使っていません」と言う。つまり、小手先の制度を変えてどうにかなるものではなく、制度はあるのに運用がおかしいということが問題です。国民の側も「公文書は自分たちのもの」という意識を持つことが大切です。

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