米軍の調査報告書は、ロワーロッドと呼ばれるローター部を支える部品の一部にベアリングがしっかり固定されなかったためにロッド1本が破損してメインローターが分離したと断定。部品を交換した3人の整備士と検査員に責任があるとした。
その1年後の16年12月には、やはり飛行中にメインローターが外れたAH64がテキサス州のガルベストン湾に墜落し、乗員2人が亡くなっている。
事故の目撃者は、地元テレビ局の取材に「大きな音が聞こえたので空を見上げると、ヘリが旋回しながら機首を下に向けて落ちてきた。その直後にローターも落下してきた」と証言。海に落ちた機体を撮影した別の目撃者は「羽根の1枚はなくなっていた」と話すなど、今回の事故と状況が似ている。このときの事故原因は、メインローターヘッド部にある「ストラップパック」と呼ばれるV字形をした部品の不良によるものだった。
何度か同様の事故が起きているということは、整備不良に加え、部品の設計を始めとする機体側の問題はなかったのか。航空機の事故をまとめた「アビエーション・セーフティー・ネットワーク」によると、00年から現在までに世界中で起きたAH64の事故は101件。原因は操縦ミスなどのヒューマンエラーが多いが、なかには整備ミスや部品の不具合もあった。
AH64はボーイング社が設計し、世界各国の軍隊に導入されている。ボーイング日本支社の広報担当者に今回の事故と米国で起きたAH64の事故について尋ねたが、「弊社からお答えすることはありません」との回答だった。
●途中で生産打ち切り
軍事ジャーナリストの清谷信一さんは、当初62機導入される計画だったのに、生産打ち切りで13機にとどまったAH64Dについて、こんな指摘をする。
「先進国ではすでに新型AH64Eを導入しており、D型では仮に有事になっても他国とネットワークの連携をとれない。稼働できるアパッチは5、6機に過ぎず、部隊としては戦う前から終わっている。今後の増数やE型へのアップグレードも発表されていない中、お金ばかりがかかり戦えない戦力が事故を起こしてしまった。事故をキッカケに防衛について根本的に考える必要もあるだろう」
(編集部・澤田晃宏、ジャーナリスト・桐島瞬)
※AERA 2018年2月19日号