●回転翼が上空で分離

 ある自衛隊パイロットは、「万が一、墜落する状況になっても、ぎりぎりまで操縦して人口密集地や民家を避け、河川敷や川などに向かい、住民の被害が出ないようにと心がけている」と語る。今回の事故はドライブレコーダーの動画や目撃情報から、ほぼ垂直に落ちていて、回避行動も間に合わなかったように見える。こうしたことから事故原因について浮上しているのが、上空でのメインローター(主回転翼)の分離だ。事故機は飛行前に羽根を機体につなぐ「メインローターヘッド」を交換していた。墜落現場の住宅の敷地からは、4本のメインローターのうち2本を発見。現場から南東に約500メートル付近の用水路から、1本が見つかった。

 専門家は一様に「メインローターが空中で分離する事故は聞いたことがないし、考えられない」(中日本航空)と首をかしげる。ヘリコプターの整備を手掛ける匠航空の森岡匠代表は、考えにくい理由をこう話す。

「メインローターヘッド交換のような整備は数人がかりでやり、テスト飛行前にも正常に取り付けられたかをローターを動かしながら地上で入念に確認します。その際に何らかの整備不備があれば振動計などに異常が出る。万一、見逃してそのまま飛んだとしても、すぐに操縦士が異変に気がつき予防的に着陸するはずです」

●同様の事故が複数回

 今回の事故について、欧米のパイロットらが集うインターネット上のサークルとして知られる「PPRuNe」では、早速こんなやり取りが交わされていた。

「メインローターが分離するなんて、ガルベストン湾とフォートキャンベルで起きたそれぞれの事故にそっくりだ」

「原因はストラップパックの不良では? ボーイングは繰り返し起きるこの問題に、もっと熱心に対処してほしいと願うよ」

 国内の航空専門家の間ではメインローターが分離する事故は極めて異例とされているが、実は米国では今回事故を起こしたAH64と同系統の機種で同様の事故が複数回起きていた。

●整備不良か機体の問題

 1度目は15年12月。ケンタッキー州にあるフォートキャンベル陸軍基地を飛び立ったAH64Eが訓練飛行中にメインローターが外れて墜落炎上し、乗員2人が死亡した。事故原因は整備不良だった。この事故を取材した米国紙「USAトゥデー」のステファニー・インガーソル記者は、本誌の取材にこう話す。

「事故を起こした機体は事故の50時間前にローター部の部品を交換した際に正しく組み付けられず、部品に負荷がかかった結果としてメインローターが空中で分解しました」

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