遺言の付言に遺言者が想いを書き残すことで、絡み合った複雑な感情がほぐれるシーンを、佐山氏は何度も体験しているという。「付言には法的効力はない。でも、人間は感情の生き物ですから、これがあるかないかでは結果が全然違うのです」と、佐山氏は信じている。

 すでに複雑な争いに発展した段階で相続トラブルを担当することになる鞠子千春弁護士の視点は少し違う。

「確かに相続問題の背後には、複雑な気持ちのもつれがあることが多く、心にせまる付言で感情が和らぐこともある。ただ、関係に既に相当な亀裂が入っている場合は付言だけでは解決が難しいのも事実。代襲相続の場合などで被相続人と関係が薄い相続人に対しては付言が心に届きにくいこともある」

 被相続人亡き後の争いを防ぐために、被相続人が相続分や遺産分割方法を指定しておく遺言の作成には、鞠子氏も大賛成だ。実際に「生前にちゃんと手当てをしておけば、ここまでの争いにならなかったと感じる案件は、すごく多い」と話す。

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