「働き方改革」を目指す政府が「副業・兼業の推進」を打ち出したことで「一つの仕事に縛られない働き方」が盛り上がっている。これを受け、大手企業の間でも副業・複業を解禁する会社が増えている。
検索大手のヤフーでも、社内のウェブシステムで事前申請すれば、本業に支障がない限り社外の仕事をすることが可能だ。
同社のデザイナー岡直哉さん(28)がもう一つの仕事を始めたのは、入社3年目。自分は社外でどれくらい通用するのかが、知りたくなった。
手始めに利用したのは、仕事を受注したい人と発注したい人をネット上でマッチングするクラウドソーシングサービス。ロゴやアイコンのコンペで得られる報酬は1件数万円ほどだが、「業務外の時間で気軽にチャレンジできるのと、コネなど全く関係ない中でガチンコ勝負できるのが良かった」(岡さん)
何度かトライするうちに採用されることが増え、ウェブサイト制作など複雑なものにもチャレンジするようになった。それらの仕事をするのは平日の夜か週末。最大の収穫は、自身の「成長」だと岡さんは言う。
ヤフーの正社員だけだったときと比べてかかわる案件数が数倍に増えた分、経験値が上がり、仕事のスピードと精度が上がった。コミュニケーション力も格段にアップしたと感じる。
「社内だからこそ通じてしまう『こんな感じで』といった曖昧なコミュニケーションが、フリーランスの仕事では通じない。相手が何を求めているのかを的確にすくいあげる力が鍛えられます」
今夏、職場の上司と組んで社外の屋外広告の「ジャパン・シックスシートアワード」コンペに応募。一般公募部門で金賞に輝いた。あくまで社外で実力を試すための複業だったが、結果的にそこで得たお金で今年2月、結婚式を挙げることもできた。
「社内評価も上がったと思うし給与も増えました」(岡さん)
独立しようと思ったりしませんか?
「大企業にいるメリットは、大型案件にかかわれること。逆にフリーは自由がきいて、クライアントとも密な関係をつくれる。いまは両方のいいとこ取りができて、僕にとってはベストです」
(編集部・石臥薫子)
※AERA 2017年12月11日号より抜粋