●価格破壊のお葬式
ここ数年、日本人のライフスタイルで変わったもののひとつに、「葬式」がある。日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」によると、葬儀費用の平均は195万7千円(16年)。ピーク時の03年から2割近く減ったというが、いま葬儀費用の「見える化」と価格破壊が進む。
葬儀業界では、バブル期の大きな祭壇を構えたホール形式から、数十人単位のいわゆる「家族葬」が主流になりつつある。大手スーパー・イオンが手がけるお葬式は、火葬だけをする「火葬式」が19万8千円(税込み)、告別式・火葬を1日で終えてしまう「1日葬」は34万8千円(同)、「家族葬」は49万8千円(同)で、分割払いも可能だ。それとは別に僧侶に払うお布施の目安(4万5千~15万円)も示す。
●お坊さん便も定着
仏教界に大きな波紋を広げたのが、法事に僧侶を手配するサービス「お坊さん便」だ。15年12月のアマゾンでのサービス開始当初は新聞やテレビで大きく報道され、全日本仏教会がアマゾンに販売中止を申し入れた。
しかし、運営する葬儀関連会社の「みんれび」(東京都品川区)によると、利用数は右肩上がりを続け、サービスとして定着しつつあるという。お坊さん便は、法事などの仏事の価格を「見える化」した。基本価格は3万5千円で、日時と宗派を選んで注文。離島と山間部を除く全国が対象で、菩提(ぼだい)寺とつながりのない人が対象だ。
繁忙期に当たる16年の7、8月の問い合わせ件数は、前年同期比で95%増。アマゾンに出品する直前の15年11月末時点で、提携していた僧侶は300人だったが、今では1千人を超えた。
利用者は、一般の葬儀の喪主の世代と同じで50代、60代が多い。都市部に住む地方出身者の利用が多い。提携する僧侶は30代の若手から70代のベテランまでと幅広い。檀家(だんか)が少なく、あるいは檀家が多くても、将来的に寺院経営が成り立たないと考えている僧侶が多い。
13年から提携している日蓮宗経王院(東京都足立区)の仲田恵慶住職(38)は、自ら布教して信徒を増やし、新たに寺院を設けて活動をしている。檀家制度を取らず、信徒は300軒弱。信徒を増やすことを目的に、年会費や寄付を募っていない。そのため寺院経営上、お坊さん便はなくてはならない存在だ。
仲田住職は、お坊さん便に対する風当たりの変化も感じるという。