法的な問題もある。パートナーの産んだ子と、血のつながりはない。彼女たち4人を家族として守るシステムはない。戸籍も名字も違い、パートナーが亡くなれば、離ればなれになってしまうかもしれない。近い将来、子どもが不利益を被らない環境が整うことを願っている。
カナさんは、子どもを持ちたいと報告した時、「難しいことだ」と咎(とが)める自分の母親に、猛抗議した自分の言葉を思い出す。
「私は、家族と子どもを持って、苦労する人生が歩みたいの」
どちらも自分の子どもで、4人が家族だ。両家の両親も、分け隔てなく「孫たち」を愛してくれている。いま、何げない一瞬が幸せだ。
●恋人や友人が否定する
当事者からも否定的な言葉を聞いてきた人もいる。
「そんなの本当の愛じゃない」
「自然の摂理に反している」
長村さと子さん(34)が付き合ってきた相手は、「子どもがほしい」と言うさと子さんに頷いてくれなかった。恋人や友人から否定されるのは、カミングアウトよりも怖かった。
さと子さんは、子どもを望む当事者グループ「こどまっぷ」を妊活中の仲間たちと立ち上げた。当事者たちと交流し、情報を集め、課題や懸念を話し合ってきた。親権や認知、パートナーが亡くなった場合はどうするか。さと子さんの願いを初めて肯定し、実行に移したのが、パートナーのカオルさん(36)だ。カオルさんは即答した。
「子どもをほしいという気持ちはおかしいことじゃない」
こどまっぷで勉強する中、カオルさんは「さと子が産む子と自分は血のつながりがない」という事実も素直に理解した。
ドナー探しは、思いのほか苦労した。善意のドナー以外にも、実際の性交渉を仄(ほの)めかしたり、数十人にオファーしていたり、真意不明のドナーもいた。
ゲイの古い友人に相談した時は、ふたつの条件を出され、ドナーの葛藤も知った。
「私個人の責任として、万が一に備えて400万円の貯金を確保する、ドナーとなる彼と完全に縁を切るか結婚するかを選ぶ、という条件でした。自分の遺伝子を継いで誕生する子どもへの、彼なりの責任感だったと思います」(さと子さん)