「そんなに簡単にうまくいくなら、僕は映画を選んでいないと思います」
AERA 2017年5月15日号で表紙に登場したのは俳優の池松壮亮。池松は、経験を積んでも、現場に入る時の“怖さ”は消えないという。それは観客に対する責任を負っているのだから当然のこと。「逆に、怖くない場所には行きたくない」
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撮影場所は本誌表紙フォトグラファー、蜷川実花の事務所。「くだけた感じで」「次はラグの上で」という蜷川の言葉に、池松壮亮は何一つ言葉を発することなく、「これしかない」というポーズを決めていく。インタビューでは冷静で落ち着いた口ぶり。いつもなら沈黙が怖くて矢継ぎ早に質問してしまうのだが、池松のペースに引き込まれ、心穏やかに向き合えた。
弱冠26歳だが、俳優としてのキャリアは10年を遥かに超える。映画を中心に幅広い世代の監督たちに愛され、昨年は9本もの作品に出演した。だが、池松は意外にもこんな言葉を口にした。
「一本撮れば、今日から俳優って言えますから。曖昧な職業だな、と思います」
俳優の道に進もうと決めたのはいつか、という問いにも、
「正直に言うと、本当に正直に言うと、いまも曖昧ですよ」