●職場の縁結びさん

 さらなる変化も起きている。“お上”が民間企業の中でも婚活を進めようとしているのだ。地方イベントに女性参加者が集まらないことなどが背景にあるよう。昨年末、企業による結婚支援について内閣府の検討会が開かれ、その席上、先進事例として紹介されたのが福井県庁の取り組みだ。200社の企業と連携し、進めているという。

 概要はこうだ。「職場の縁結びさん」と呼ばれる人を置き、独身社員に他企業との合コンをセッティングしたり、婚活イベントへの参加呼びかけをする。キャッチコピーは“職場のめいわくありがた縁結び”で、最初は迷惑でも、必ず良い結果に結びつき感謝することになりますよ、という意味らしい。県内183社が登録する専用サイトには、独身社員のPRコメントも掲載している。

 それだけではない。高知県では県庁が“少子化対策を県民運動へ”と謳い、「高知家の出会い・結婚・子育て応援団」を創設。結婚支援窓口を開設し、婚活イベントのパンフレットを独身社員の目につく場所に置いて配布しているという。

 これらの動きに警鐘を鳴らすのは弁護士の太田啓子さんだ。

「未婚や少子化問題を解決するには、安定した収入や残業を減らすなどの雇用環境の改善、そして保育園整備が先決のはずです。結婚を望まない人やLGBTなど、多様な生き方を認めることにも逆行しています」

●ライフデザインに注意

 一方で企業内での働きかけについて、福井県の担当者は「普段のコミュニケーションの流れの中で声がけをしているので、プレッシャーはないはずです。批判的な意見も出ていませんよ」。だが企業が社員の結婚支援をするとプライバシーを侵害する可能性もあり、手法を問わず強制的と捉えられ得るとの懸念は内閣府検討会にも数多く寄せられていたはず。同検討会の最終的な提言にも十分に配慮するよう書かれてはいるものの、

「皆さん前向きに捉えているので、パワハラの懸念をあまり強調しすぎても……」

 とこの担当者はあまり意に介さない様子だ。企業へのヒアリングも行っておらず、現状把握も不十分に見える。

 さらにこんな見方もある。モンタナ州立大学社会学・人類学部准教授の山口智美さんは、政府や自治体が今後は「ライフデザイン」にまで力を入れてくる、と予想しているのだ。山口さんはこう警告する。

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