

「光学式」「デジタル式」それぞれの長所を生かすため、両タイプの投影機が併用されている東京スカイツリータウン“天空”(撮影/写真部・岸本絢)


今どきのプラネタリウムは「大人も楽しめる」のが当たり前。繊細な感性とセンスを駆使した、日本独自のプラネタリウム文化が各地で開花している。
薄明かりのトンネルをくぐった先に、非日常の世界があった。
会場に漂う癒やしのアロマの香りに、からだ全体が包まれる。リクライニングシートに身を沈めると同時に、アルファ波が脳内に満ちてきた。
12年にオープンした東京スカイツリータウンのイーストヤードにあるプラネタリウム“天空”。小学生未満は入場不可の「ヒーリングプラネタリウム」を初めて観覧した。
お目当てはバイオリニストの葉加瀬太郎さんとのコラボ作品「Feel the Earth」(17年1月30日まで)だ。葉加瀬さんの演奏が星空とマッチするのは観覧せずとも容易に想像できる。が、作品の洗練度は期待を上回った。壮大なパノラマ映像と、優雅で伸びやかな楽曲。これらを間断なく浴びると、現実と空想の壁が崩れていく。だめ押しはバラの香りのアロマだ。上映後に聞いて唸ったのだが、香りが常に新鮮に感じられたのは、2種類の異なる成分のアロマを交互に漂わせているからだという。
星と星を線でつないだ星座を眺めながら「学習」する場所。そんなプラネタリウムのイメージは音を立てて崩れていった。
●常識からはみ出す作品
プラネタリウム機器メーカー「コニカミノルタプラネタリウム」直営の施設は国内でもこの“天空”と、池袋サンシャインシティ内にある“満天”の2カ所に限られる。
“満天”は04年の同社直営を契機に、「プラネタリウムの可能性を広げる」決意で、「大人も楽しめるエンターテインメント施設」へ路線転換。星座解説やナレーションを少なくし、映像の迫力や洗練度、ストーリー性にこだわった。
「これまでのプラネタリウムの常識からはみ出すような作品を提供したい」
そう話す白谷泰子総合プロデューサーは、「癒やし」だけにこだわるつもりはない。今後はどんな作品を?との質問に、さらっとこう答えた。「例えばホラーとかも」。ますます目が離せない。
「大人向け」を意識したトレンドは自治体所有のプラネタリウムでも進んでいる。
東京都足立区の複合施設「ギャラクシティ」内のプラネタリウム「まるちたいけんドーム」。13年のリニューアル年の夏以来、毎週水曜日(第5週、祝日等を除く)の夜を「大人のためのくつろぎタイム」と銘打ち、入場者を18歳以上に限定している。