2016年の新語・流行語大賞は「神ってる」。“聖地巡礼”“パワースポット”がにぎわいを見せ、神様が身近にあふれる。3・11から6年、一人ひとりがそれぞれの形で宗教と向き合う時代。日本の宗教にいま、何が起きているのか。AERA 1月16日号では「宗教と日本人」を大特集。その中から、学生たちが開催した「宗教映画祭」を紹介する。
* * *
昨年12月、東京・渋谷の小さな映画館で開かれた映画祭に、2千人を超える人たちが足を運んだ。その名も「宗教映画祭」。
モノクロのサイレント映画「裁かるゝジャンヌ」、大島渚の初時代劇「天草四郎時貞」、世界一厳格と言われる修道院の内部を淡々と映し出すドキュメンタリー「大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院」──。洋の東西を問わず、1920年代から2010年代まで、年代も主題も実にさまざまな15作品が上映された。
「作品選択の基準となったのは、“なぜ信じるのか”を理解したい、という思いです」
映画祭代表の木村孔紀さん(21)が説明する。日本大学芸術学部映画学科映像表現・理論コースで学ぶ3年生だ。映画祭は古賀太・同大教授のゼミの授業の一環で、学生たちによって企画運営された。テーマと上映作品の選定、映画会社との交渉、宣伝やチケット販売など、すべて学生が担当。これまで「女性」「働くということ」「マイノリティー」をテーマに開催してきた。
●宗教に不信感漂う時代
木村さんはじめ、ゼミ生の多くが95年生まれだ。
「オウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた年に生まれました。あの事件が何だったのか、彼らが何をしたのかもよく知らないまま、『宗教=危ないもの』という意識だけが植えつけられてきました」
木村さんはそう言う。9・11が起きた01年は6歳。宗教に対する不信感が漂う時代に生まれ育ったとも言える。
はじめは宗教というテーマに拒否感を示した学生もいたという。だが、教義や宗派の理解といったことではなく、信じるという行為そのものを映画を通して見ることが、植えつけられた宗教アレルギーと向き合うことになる、と彼らは考えた。
会場であるユーロスペースの支配人・北條誠人さんにも意見をもらいながらテーマを掘り下げ、「信じる人をみる」という方向性が固まった。