2017年が幕を開けた。16年は、トランプ氏の大統領選勝利に代表されるように、世界中で既成概念や秩序が「反転」した年だった。今年はどうなるのか。天皇の生前退位について、放送大学教授の原武史さんに話を聞いた。
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昨年8月8日の「おことば」で天皇が生前退位の意向を国民に向けて表明し、それを受けて政府が検討を始めました。皇室典範の改正ではなく、今の天皇に限った特例法によって、2018(平成30)年までに代替わりするというシナリオはもうできていると思います。
ただ、憲法2条には皇位は「皇室典範の定めるところにより」継承すると書かれていますし、生前退位を皇室典範の改正なしに進めることは問題があるとする憲法学者もいます。さらに、今回生前退位が実現すれば、それはどう取り繕っても天皇の「おことば」がきっかけとなっており、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」とした憲法4条に抵触すると私は思います。天皇の政治的な行為を認めた前例を作れば今後も憲法との齟齬(そご)がますます拡大していく可能性があります。
「おことば」の中で天皇は、象徴天皇の務めにつき、積極的に定義づけを試みています。
「即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました」