米大統領選予備選挙のクライマックス「スーパーチューズデー」。各陣営の集会や投票所で、有権者たちの「怒り」を聞いた。
6月まで続く指名候補争いの行方を大きく左右する「スーパーチューズデー」の3月1日。マサチューセッツを含む11州で予備選挙・党員集会が行われた。予備選挙期間中に各候補が獲得する代議員数で、11月の本選挙の指名候補が民主、共和両党でそれぞれ1人に絞られる。民主党は、11州に割り当てられた代議員計865人のうち、クリントンが450人以上を確保。共和党は、計595人のうち、トランプが200人以上を確保している。
米メディアは早くも、本選挙がクリントンとトランプの対決になる可能性が高いと伝える。果たしてこの2人が、有権者にとって「信頼」できる候補者なのか──。
スーパーチューズデーに先立つ2月28日の日曜日。ボストン中心街から約4キロ北にある労働者階級の住宅地チェルシーで、戸別訪問をする若者3人に出会った。サンダースの支持者で、20代前半。週末に約300キロ離れたニューヨークからバンに乗り、ボストンに来て選挙戦のボランティアをしていた。マサチューセッツ州は、クリントンとの接戦と聞いたからだ。
「こんなにお金がモノを言う時代にバーニーは、金融機関や薬品メーカー、億万長者から一切寄付を受けず、庶民からの寄付だけで9600万ドルも集めた。でも、クリントンは、ウォール街の貪欲な金融機関から大金を受け取っている」と、非営利団体勤務のエイダ・バルガス(23)。
戸別訪問に応じた白髪の白人女性は、投票する候補者を決めていなかったが、こう言った。
「私は無所属だけど、クリントンとトランプがホワイトハウスに行くのだけは、阻止したいわ。金まみれで、悪人づらよ」
企業からの広告が収入源の主要メディアは、サンダースの戦いぶりをクリントンほど報じない──若者たちは口々にそんな不満をあらわにする。大学を卒業した段階で平均2万7千ドルもの学生ローンを抱える若者たちの多くは、「富」の集中に対して激しい嫌悪感を示す。バルガスは言う。
「学生ローンの返済のため、食べることさえままならない友達がたくさんいるのに……」
(文中敬称略)(ジャーナリスト・津山恵子)
※AERA 2016年3月14日号より抜粋