AI・データサイエンスの活用のおかげで暮らしが便利になる一方、まだ使い手の知識やスキルが足りず、問題が起こる場面もある。
技術をより良く活用し、Well-being="誰もが健やかで幸せな社会"を実現する方法とは?
interviewQ.AI・データサイエンスを始めたきっかけは?/AI・データサイエンスの魅力とは?
京都大学
情報学研究科 教授
国際高等教育院附属
データ科学イノベーション教育
研究センター長
山本 章博 さん
上智大学
学務担当副学長
理工学部情報理工学科 教授
伊呂原 隆 さん
同志社大学
文化情報学部 特別客員教授
狩野 裕 さん
武蔵大学
社会学部メディア社会学科 教授
武蔵学園データサイエンス研究所副所長
庄司 昌彦 さん
株式会社NTTドコモ
R&D戦略部 社会実装推進担当
シニアエキスパート
落合 桂一 さん
株式会社リクルート
データ推進室
アドバンスドテクノロジーラボ
所長
竹迫 良範 さん
京都大学
情報学研究科 教授
国際高等教育院附属
データ科学イノベーション教育
研究センター長
山本 章博 さん
- Q AI・データサイエンスを始めたきっかけは?
- A数学を学んでいた大学時代、4年次に「人工知能」の研究授業で数理論理や自動証明を学んだことでAIの道へ。研究者になってからは、数理論理を使った機械学習が研究対象です。
- Q AI・データサイエンスの魅力とは?
- A数学・数理論理学を使ってデータの背後にある隠れた規則性を解き明かしていく面白さはもちろんですが、私の場合は少し変わっていて、「AI」「データサイエンス」を研究することで、数学自身に隠れている「AI」「データサイエンス」の要素に気づけたことも面白いと感じました。
上智大学
学務担当副学長
理工学部情報理工学科 教授
伊呂原 隆 さん
- Q AI・データサイエンスを始めたきっかけは?
- Aデータ駆動型社会と称される現代において、あらゆる分野でデータを活用する能力が求められており、データと向き合うことなくしてこのような社会のリーダーとなることは困難であると考えたためです。
- Q AI・データサイエンスの魅力とは?
- A難解な科学技術論文から、くだけた表現を含む大学の授業アンケートの自由記述に至るまで、自然言語を極めて正確に理解し、要点を把握し、指示された分量で要約を作成する能力には驚嘆せざるを得ません。
同志社大学
文化情報学部
特別客員教授
狩野 裕 さん
- Q AI・データサイエンスを始めたきっかけは?
- A数学の勉強が受験目的から抜け出せていないことを学生時代から日本の教育の課題と考えてきた。そこで、研究・開発・実生活に生かす応用数学・数理科学に関心を持ち、中でも、統計学の研究と教育を進めてきた。
- Q AI・データサイエンスの魅力とは?
- Aデータ分析によって、想定通りの結果が得られる、予想外のことがわかる、その背後に数学的ロジックが見つかる、といった経験全体がデータサイエンスの醍醐味。昨今は、これらを第三者と共有することも楽しくなった。
武蔵大学
社会学部メディア社会学科 教授
武蔵学園データサイエンス研究所副所長
庄司 昌彦 さん
- Q AI・データサイエンスを始めたきっかけは?
- A誰もが自由に使える「オープンデータ」という概念や社会運動に出合ったことです。これを公共財として充実させていくことが、民主主義促進や社会課題解決、経済・文化の発展につながり社会を豊かにすると思いました。
- Q AI・データサイエンスの魅力とは?
- A学生が注目したSNS上の流行や新たな文化現象等を計測・分析・考察して、新たな発見があると非常に楽しく感じます。AIと社会の関係については、難題に向き合い新時代を切り拓いていくやりがいを感じます。
株式会社NTTドコモ
R&D戦略部 社会実装推進担当
シニアエキスパート
落合 桂一 さん
- Q AI・データサイエンスを始めたきっかけは?
- A2011年に当社のサービスでTwitter(現X)の投稿を活用していくプロジェクトが立ち上がり、テキスト解析を始めたことがきっかけです。そこで機械学習に触れ、今後いろいろなところに応用できそうと思い勉強し始めました。
- Q AI・データサイエンスの魅力とは?
- A事前に立てた仮説と実際のデータ分析結果が、想定通りにうまくいくことも面白いですが、仮説から外れるデータが見つかったときに、原因を考え、そのドメインの専門家と議論し、解決できたときが面白いです。
株式会社リクルート
データ推進室
アドバンスドテクノロジーラボ
所長
竹迫 良範 さん
- Q AI・データサイエンスを始めたきっかけは?
- A高校時代にゲームセンターに通い続けて散財してしまいました。自分で対戦ゲームを作れるようになると一生無料で遊べるのでは? と思い、AIを学べる情報科学部のある大学に志望校を変更しました。
- Q AI・データサイエンスの魅力とは?
- AまだまだAIやデータサイエンスが活用されていない仕事がいっぱい世の中にあります。AIを活用して仕事が楽になると、その人から感謝されます。自分の仕事が世の中や人の役に立っていることを常に実感できます。
木村恵子(AERA編集長) 本誌でAI・データサイエンスをテーマにした座談会を開くのは4回目です。毎回、新しい話題が登場し、この分野が日進月歩であることを実感しています。最近ではどんなAI・データサイエンスの活用例がありますか。
山本章博さん(京都大学) 本学の大学院情報学研究科の研究グループが2020年、アイヌ語の語り部の言葉をAIの音声認識によって自動的に文字化し、さらにアイヌ語の文章を語り部の方が実際に話しているような音声として合成することに成功しました。アイヌ語は現在、UNESCO※1により極めて深刻な消滅危機言語に指定されています。この研究では、貴重な文化を、AIの力を使って継承していくことを目指しています。また、他の言語についてもこうした取り組みを始めているようです。
※1 国際連合教育科学文化機関。諸国民の教育、科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とした国際連合の専門機関。
伊呂原 隆さん(上智大学) 本学では、学生の授業に対する満足度を測るアンケートを毎学期、実施しています。5段階での評価欄と違い、分析が難しいのが自由記述欄。集まる回答数は10万規模なので、人による集計は膨大な時間がかかります。しかし、生成AIを使えば、自由に書かれた文章を瞬時に分析し、要点をまとめることができる。このことがアンケートの効果的な活用につながっています。企業でも市場調査などでのアンケート分析の効率が飛躍的に高まったのではないでしょうか。
庄司昌彦さん(武蔵大学) 私は選挙の例を挙げたいと思います。今夏の東京都知事選挙では、AIでバーチャル化した候補者が政策を語ることが話題になりました。海外では、生成AIを使用して、過去の指導者がメッセージを発信するフェイク動画などが作成され問題になりました。また、有権者のパーソナルデータをもとに誰にどのメッセージを送ると効果的かを分析する、ということも海外の選挙では行われていて、これはビッグデータの非常に高度で実用的な活用例だと思います。
狩野 裕さん(同志社大学) 研究分野では、使われていない所を探すのが難しいという状況です。例えば、私が在籍する文化情報学部では、人の動きを捉えるときにモーションキャプチャーを使った動作情報の検出を行います。これにAIを用いることで、今までのように体中に貼るマーカーが不要になり、動画が残っていれば、たとえ故人でも体の動きを測ることができるようになりました。AIの画像認識の進歩が研究の幅を広げています。
木村(AERA) 企業ではどんな新しい活用例がありますか。
落合桂一さん(株式会社NTTドコモ) 私が過去に携わっていた事業を紹介します。当社のコールセンターには、スマートフォン(スマホ)の操作に慣れていない方からたくさんのお問い合わせをいただきます。スマホが普及するほど、使う側、売る側双方に負担なことが増えてきました。そこで、スマホにAIを搭載し、操作の仕方で困っている内容を推定し、自動的にご案内する機能を搭載しました。どちらにとってもメリットのあるAIの使い方です。
竹迫良範さん(株式会社リクルート) 当社が提供するオンライン学習サービスに、生徒一人ひとりの習熟度に合わせた講義を推薦する機能があります。独自開発したAIが学習履歴から、その人に必要な学びを判断します。人を介さずに、自分に合った学習法を取り入れられるのが利点です。
木村(AERA) 今回のテーマである「ウェルビーイング※2」は、「個人や社会が良い状態であること」を意味します。AI・データサイエンスの活用は、私たちのウェルビーイングにどう関わっているでしょうか。
※2 世界保健機関(WHO)の憲章による「健康の定義」では、“病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(Well-being)にあること”(意訳)とされている。
狩野(同志社) わかりやすい事例では車の自動運転でしょうか。車を所有していなくても、夜中の急病の際に自動運転のタクシーが来てくれたり、高齢者の運転技能が落ちても、免許を返納することなく車に乗ることができたりするのは、多くの人にとって幸せな社会と言えるでしょう。
伊呂原(上智) 心と体の健康に役立てるヘルスデータの分析での活用も挙げられます。スマートウォッチで体調測定をするように、個々に最適化したアドバイスを受け取れる仕組みづくりなど、メンタルヘルスの改善につながる技術革新にも期待したいです。
落合(NTTドコモ) 健康については長期にわたるデータが必要なので、今はその途上です。データがもっと集まれば、うまく活用できる時代になるだろうと思います。
伊呂原(上智) 自動運転や人の健康を測るウェアラブルデバイスが普及すれば、ネットワーク空間に膨大なデータが集約されていきます。ただ、データがあるだけでは「便利」でなく、ネットワークの中の「サイバー空間」と、人間が生きる「フィジカル空間」をうまく接続する必要があります。その役割を果たすのがスマホやスマートウォッチなどのデバイスです。
庄司(武蔵) AIがフィジカル空間の仕事を奪うという議論もありますが、特にサイバー空間の側ではエンターテインメント分野などを中心に、新たな仕事も生まれるはずです。例えばゲームの世界は、eスポーツなどのビジネスとしても、生活文化としても、今後はさらに発展しウェルビーイングに貢献するでしょう。
竹迫(リクルート) 働き方の多様化が進むのではないでしょうか。例えば翻訳機能が発展することで言語によらないコミュニケーションができ、VR※3を使えば場所を問わない働き方が可能になると予想します。グローバルな働き方がより促進されていくはずです。そして職場のデジタル化が進めば、勤務時間が減って余暇の時間が増える、そんな社会の実現を期待しています。
※3 バーチャルリアリティー。仮想現実ともいわれ、視覚を始め触覚や嗅覚、聴覚などに訴え、現実のような体験ができる仕組み。
庄司(武蔵) 働き方といえば、地方自治体では、人口の多い1970年代初頭生まれの「団塊ジュニア」が引退すると、その補充ができないまま、今の半分の人数で仕事を回していかなければならないと予想されています。そこで期待されるのがAIロボットの活躍です。ただ、AIを導入する前に、人に負荷をかけてきたアナログで非合理的な仕事の仕方を根本から見直す必要がありますね。
山本(京都) 私はAIやデータサイエンス研究が進展した先に、多様性を尊重する社会を実現したいと考えています。たとえ疾患や障がいがある人でも、パーソナライゼーション※4された教育や仕事を得られ、活躍の場や行動範囲を広げていけるような社会です。つまり個人にとって価値ある世の中を作っていくためにAIやデータサイエンスはあると考えます。
※4 個人の適性や能力、性質などに合わせること。
木村(AERA) AI・データサイエンスの活用には課題もあると聞きます。
山本(京都) 今、最も大きな問題だと感じるのは、最初の「データ収集」です。分析のために必要かつ十分な量と質が得られているのか、首をかしげるケースが多いです。イラストを描く生成AIに「京都大学の情報学科の学生の絵を描いて」と指示を出すと、ほぼ男子で、めがねをかけてうつむいている学生が出来上がります。実際は女子を含め、多様な学生がいます。
落合(NTTドコモ) AIは既存のデータを学習しているので、そのデータが偏っていれば、分析結果もそれに引っ張られますね。データの公正さをどう担保していくかが重要だと思います。
木村(AERA) そうしたAI・データサイエンスの弱点を克服するには、どのようなことに力を注ぐべきでしょうか。
山本(京都) AIを社会で信頼される形で利用できるようにするための技術が求められます。また、今のAIは膨大な電力を消費するなどの問題もあるので、効率の良いアルゴリズム設計も必須です。AIやデータサイエンスの仕組みをきちんとわかった上で、どういう仕事があるのかを考えるといいですね。
落合(NTTドコモ) データの公平性、倫理性をチェックする技術は今後、ますます重要性が高まると思います。
竹迫(リクルート) その通りで、当社ではAIのガバナンス※5の仕事ができました。AIが学習するデータにプライバシーや人権の侵害、差別、多様性の排除がなされていないか定期的にモニタリングして、検査する仕事です。
※5 適切に用いるための管理体制。
狩野(同志社) 「千のことを言ったうち正しいことは三つもない」という意味の「せんみつ」という言葉がありますが、AIの場合は逆です。つまり、千のうち三つくらい間違うのです。今後、AIが進化するほど、その間違いを見抜くためにはより高度な知識レベルが求められます。まず自分の専門においては、AIの「せんみつ」を検出できるような確かな知識を持つこと。学生にはいつもそう話しています。
竹迫(リクルート) そうですね。例えば議事録などはAIで作成できるようになりましたが、専門用語やそのほか複雑な言い回しは、AIが間違う可能性が捨てきれません。私もAIが生成した結果が正しいかを評価することが一層、大切になると思いますし、その仕事はなくならないはずです。
木村(AERA) AIが発達するほど、人の目と手が必要で、そのための高い技術が求められるのですね。その上でAI・データサイエンスでウェルビーイングを実現するには、どんな能力が必要と考えますか。
伊呂原(上智) まず、課題を発見する力だと思います。私たちの社会、学校、身の回りでは一体何に困っているのか、効率が悪いのはどの部分なのか、それがわからないと、AI・データサイエンスの高度な技術を生かすことができません。
山本(京都) 例えば最初にお話ししたアイヌ語のAIによる音声認識の開発の場合、音についての物理的知識、人間の聴覚に関する知識、音の計測法の技術も必要になります。学生のうちから、幅広い分野に興味・関心を広げられるといいですね。
庄司(武蔵) 個人や組織、社会をさまざまな角度から客観的に捉え、より本質的な課題を設定できること。その過程では、その社会課題を解決する必要が、そもそもあるのかを疑うことも必要です。つまり、何が大事なのかを見極める、批判的な視点が求められます。そのためには統計学などの基礎的な理系の知識に加え、人文社会科学を含む幅広い教養を有することが求められます。いわゆる文理融合の学びが必須です。
伊呂原(上智) そうですね。さまざまな学問分野の力を総動員しなければなりませんし、分析結果をわかりやすく伝える言語能力も必要です。英語をはじめとした語学力も重要となるでしょう。また、批判的思考とは他人の考えを否定するのではなく、まず相手の話を聞くことから始まりますので、傾聴力を養ってほしいです。
狩野(同志社) 未知の現象を解き明かしたり、課題解決の糸口を見つけたりするA I・データサイエンスの活用は、結果、人に健康や幸せ、社会に安定や平和をもたらします。つまり、AI・データサイエンスの究極の目的がウェルビーイングに貢献することだと言えます。ひいては、AI・データサイエンスを学ぶことは人生をいかに生きるべきか、幸せとは何かという、答えのない問いに挑むことでもあります。その支えとなるのが、人類が積み重ねてきた文化、叡智への理解ではないでしょうか。
木村(AERA) AI・データサイエンスは、対「数字」だけではなく、人間を扱う学問でもあるわけですね。
狩野(同志社) さまざまな人とのコラボレーションが欠かせません。例えばスーパーマーケットの売り上げが落ちている問題を解決するとなると、店舗の売り場とお客さまのことをよく見て、働いている人からも話を聞かないといけません。人間関係を築き、信頼してもらい、情報を得て初めて、仕事ができます。
落合(NTTドコモ) 私にもコラボレーション力の重要性を実感した経験があります。スマホで人のストレス値を測る研究プロジェクトがあったとき、こちらには心理学や精神医学の知見がないので、医学部や心理学部の先生との共同研究となりました。相手と議論する場合は、私は専門の工学的な面から、相手は心理学の面から意見を出し合い、技術に落としていくことができました。
木村(AERA) AI・データサイエンスには総合的な力が必要であることがよくわかりました。大学ではどのような教育に力を入れていますか。
伊呂原(上智) 「データサイエンス概論」を全学部共通の1年次の必修科目としています。高校数学の知識がなくても学べるようになっているのが特徴です。2年次からはレベルアップしながら、データサイエンスを体系的に学べる全学部対象のプログラムも用意しています。授業や実習についていけなくなった場合などに、気軽に相談できる「データサイエンス・クリニック」を設けていますので、文系の学生も安心です。今は人生100年時代。人生の基盤を作る教育を提供し、ウェルビーイングな社会に資する人材の輩出を目指しています。
1年生は全員受講! 手厚い支援体制[ データサイエンス概論 ]
社会のリーダーとなる上で不可欠な「データの分析結果を利活用できる能力」を育てるため、データサイエンスの全体像を把握する「データサイエンス概論」を全学部共通の1年次必修科目に設定。さらに、学習支援サービス「データサイエンス・クリニック」では、学びの悩みのほか、例えば課外活動でのデータ活用方法、関連資格の取得など、幅広い相談内容を受け付けている。
▶「プレゼン失敗で不採用」は企業でもあり得る話。考えを言語化する力も備わる点が重要です。(NTTドコモ)
▶実際には数学の知識よりも方法論が重要な場面も。文理の壁なく挑める点がすごいです。(リクルート)
山本(京都) 本学のデータ科学イノベーション教育研究センターで提供しているデータサイエンス関連の科目は、文理問わず履修でき、学生自身の専門に落とし込めるようになっています。企業の協力も得て課題解決型の課外授業を開講して、解決の道筋までわかってもらうよう工夫しています。また、近畿地方のさまざまな大学とも連携し、データサイエンス教育について意見を交換しながら、データサイエンスのより良い教育を目指しています。
近畿地方の連携・教育を牽引する[ データ科学イノベーション教育研究センター ]
国際高等教育院に設置され、文部科学省事業「数理・データサイエンス・ AI 教育の全国展開の推進」の拠点校・近畿ブロック代表校として活動。専門分野を問わず、学部・大学院でのデータサイエンスに関する科目の提供や、企業の協力による課外授業の開講、近畿地方のさまざまな大学や先生方との連携を通して、データサイエンス教育の普及と改善に取り組む。
▶学外で課題を発見し、企業の現場を見る経験は、社会に出た時のために有意義だと感じます。(NTTドコモ)
▶今後は地域性を生かしたコラボレーションや、地域への還元が重要。非常に共感しました。(リクルート)
庄司(武蔵) 人文社会科学におけるデータサイエンスを追求しています。社会学部では17年からグローバル・データサイエンスコースを、24年からは全学部においてデータサイエンス副専攻を設置し、全ての学生がデータサイエンスのリテラシーを養える仕組みを整えています。中学・高校を含む武蔵学園全体で取り組んでいることも強みであり、一般向けのセミナーも開いています。どのような社会を目指すのか、皆で考えたり、議論できたりする場を設けることで、ウェルビーイングに貢献できるのではないかと考えています。
文理融合を実現する新たな試み[ データサイエンス副専攻 ]
2024年から全ての学部生が履修できるデータサイエンス副専攻を設置。データサイエンスで社会課題を分析・解決することができる人材育成を目的とした、全学的なデータリテラシー教育を推進している。また、高校・中学も含む学園全体の組織としてデータサイエンス研究所を設け、社会科学を視点の軸に据えたデータサイエンス教育に取り組んでいる。
▶高校生も巻き込んでのデータサイエンス教育は先進的であり、今後が非常に楽しみです。(NTTドコモ)
▶政治や海外の動向など社会背景を理解しながら課題解決できる人材は非常に重要です。(リクルート)
狩野(同志社) 本学の文化情報学部は学部を開設した20年前から、文化をデータで分析する研究を行っています。それを社会に還元することで、文化を楽しみ、私たちの暮らしに生かすことを目的とした面白い学部です。その研究活動の土台として、全学部の学生を対象としたリテラシーレベルのデータサイエンス・AI教育プログラムを必修とし、より高度な応用基礎レベルの科目への架け橋としています。また、その成果を社会に実装することを目指し、探究型科目(リサーチ科目)を3、4年次の必修としています。
課題解決力の基礎を培う必修科目[ データサイエンス・AI教育プログラム「DDASH」 ]
文化情報学部では、2024年度からデータサイエンス・AI教育プログラム「DDASH-L」(リテラシーレベル)を必修化。また、学部専門科目の中にデータ科学系科目群を配置し、数理・統計・計算機科学の基盤的な知識に基づく、専門性の高い教育を実施している。さらに、3、4年次には学びの集大成として探究型科目(リサーチ科目)を配置し、データサイエンスの手法で課題解決ができる力を養成する。
▶「課題解決のためのデータサイエンス」というテーマは、社会の需要に非常に合致しています。(NTTドコモ)
▶数学の素養を持ち、探究活動のような中長期のタスクに取り組める人材は必要です。(リクルート)
木村(AERA) 企業として、学生時代にどんな力を身につけてほしいですか。
竹迫(リクルート) 論文をまとめるためには、仮説と検証のサイクルを回す力や、調査などを行う中でのコミュニケーション力を必要とします。社会に出てからも、前提知識のない人に自分のやりたいことを理解してもらうために役立ちますので、論文を書く訓練を積んでほしいです。指示されたことよりも、自分で提案した仕事ができる方が楽しいと思います。
落合(NTTドコモ) 企業では、業務内容にもよりますが自身の専門分野以外の知識も必要となったり、異動で新しい知識が必要になったりします。そのため大学では、まず、いろいろな分野を自分で学んでいき、「新しいことの学び方」を学んでほしいですね。そして、AIやデータサイエンスはあくまでも手段なので、何が解決できるか、誰にとって、どんな幸せや嬉しいこと、メリットがあるのかを見いだせる目を養ってほしいと思います。
庄司(武蔵) AI・データサイエンスには、今後社会で働く上で不可欠という面や、課題解決という大きな使命を持っていますが、楽しい学問だということを最後に付け加えたいですね。物事を違う方向から見ると、こんなことがわかるのか!と気づくワクワクがある、ということを学生には感じてほしいと思います。
AI・データサイエンスの活用が文化の保護から先端的なバーチャル機能まで、よりリアルで幅広いものになっていることを実感しました。倫理面などの課題がありながらも、この技術が一人ひとりの快適さや生きやすさにつながっていくことに、社会の希望が見えます。それを実現させる人材の育成に努める各大学の努力に期待しています。