●常温で90日間新鮮に

 そこで開発したのが「ダブル逆止弁キャップ」。二重構造なのはパウチタイプと同じだが、内袋からしょうゆが出ると、そのぶん空気が外袋に入り、内袋がつぶれて、ボトルの形が保たれる仕組みになっている。

 開発に携わった井上さん曰く、

「容器開発で難しかったことは、使いやすさと強度を共存させることでした」

 一滴から注ぐことができ、常温で90日間鮮度を保てる。

「今後も少量使用とニーズの多様化に応えていきたいと考えています」(井上さん)

 ラー油で国内シェア70%以上を誇るエスビー食品も、注ぎ口の変革を追求している。

 00年、押すと出るプッシュ型容器のラー油を発売。おおむね好評だったものの、二つの課題が浮き彫りになった。プッシュボタンの硬さと、横向きノズルによる液漏れだ。

 問題を解決したのが「ラク押しボタン」と「上向きノズル」。消費者の声をもとに大矢肇執行役員を筆頭とする開発チームが試作を行い、4年の歳月をかけて昨年9月に発売を迎えた。

「今年、ラー油発売50周年を盤石の体制で迎えるにあたって、15年にこの技術を完成させたいと思っていました」

 そう語る商品部の中島康介さん(37)も開発メンバーの一人。ラク押しボタンの色にこだわった。以前はボタンがキャップと同じ色と素材だったため、認識しにくかった。ボタン部分を半透明の樹脂製にし、軟らかそうで、思わず押したくなるような形状に変更。さらに「コンタクトリング」という小さな突起をつけることで、ガラス瓶開口部とキャップの密着性を高め、液漏れを防いだ。

 製造ラインも一新。新キャップのほうがコストがかかるが、販売価格は据え置いた。

 辛さなどによって3タイプあるうち、「四川風」が前年比250%の売り上げを記録。王道の「ノーマル」「唐辛子入り」に比べ扱う小売店が少なかったが、キャップ改善をきっかけに認知度が高まったためという。四川風の花椒(ホァジョー)はノズルから出ないが、唐辛子は通過するよう設計されているなど、芸が細かい。

「味はもちろん、使用感にもこだわっています。家でギョーザを食べるときにワクワクする充足感を生む商品を今後もつくっていきたい」(中島さん)

●定番商品ほど難しい

 大量消費がよしとされた時代には、同じ中身なら容量が多く、単価が安いほうが消費者に好まれた。ある調味料メーカーが、注ぎ口の穴を大きくすることで売り上げを伸ばしたなんて都市伝説も、まことしやかに流れていた。

 だが、それも過去の話。食品メーカーは、中身だけでなく注ぎ口などパッケージでも変革を迫られている。「日本パッケージングコンテスト」を主催している日本包装技術協会(JPI)の竹内攻(おさむ)業務推進部長は言う。

「商品は“慣れ”と“使いやすさ”のバランスが重要。消費者は全く新しいタイプだと、逆に使いづらく感じてしまう場合もあります。定番商品を出している会社ほど、パッケージを変えるのをためらうのではないでしょうか」

AERA 2016年2月22日号

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