アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は近畿日本鉄道の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■近畿日本鉄道 鉄道本部名古屋統括部 運輸部事業課長 辻本充則(45)
主要国首脳会議(サミット)の開催地に決まった三重県志摩市の賢島。英虞湾に浮かぶ風光明媚なこの島と鳥羽駅を結ぶ近鉄志摩線の貸し切り列車内を、数羽のフンボルトペンギンが散歩する。ペタペタと歩く様子に、乗客から「かわいい」と声があがる。近畿日本鉄道の人気企画「ペンギン列車と志摩マリンランド『バックヤード探検』ツアー」だ。
飼育員のえさにつられて歩くペンギンは、揺れる車内でもよろけることはない。近鉄でイベント企画を担当する事業課長の辻本充則は言う。
「飼育員の方は最初はちゃんと歩いてくれると思っていなかったそうですが、さすがはプロ。私より賢いです」
ペンギン列車は7年目となる今年度、計6本の運行を予定。初回は6月13日だったが、次回の運行は10月24日以降。ペンギンは暑さに弱いためだ。近鉄は、ほかにも「ビアトレイン」や「うまいもん列車」「婚活列車」など、ユニークな企画で乗客を楽しませ、その先頭に辻本がいる。
身長190センチ。県立和歌山工業高校でラグビーを始めて、全国大会にも出場。ポジションはロック。国士舘大学体育学部を卒業後、近鉄に就職して名門チームの一員になった。30歳で選手を引退するまで、ラグビーひと筋。引退後は大阪阿部野橋駅(大阪市)の駅員から始まり、さまざまな仕事を経験。総務課では人事担当として採用試験も作った。さあ、今度はペンギンである。
14人の部下がいる。
「どちらかといえば理論派ではなく直感型ですが、絶対に怒りません。仲間は大事ですからね。最後まであきらめず、みんなをしっかりと引っ張っていきたい」
次の新企画は、「カピバラトレイン」(7月26日、9月12日に運行)。列車の中でカピバラはどんな反応をするか、いろいろテストしている。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・西元まり)
※AERA 2015年7月27日号