「進撃の巨人」特撮監督尾上克郎さんおのうえ・かつろう/1960年、鹿児島県生まれ。「白痴」「陰陽師」「のぼうの城」などの映画で特撮監督。2016年公開予定の映画「ゴジラ」の特撮も担当する(撮影/編集部・野村昌二)
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「進撃の巨人」特撮監督
尾上克郎
さん
おのうえ・かつろう/1960年、鹿児島県生まれ。「白痴」「陰陽師」「のぼうの城」などの映画で特撮監督。2016年公開予定の映画「ゴジラ」の特撮も担当する(撮影/編集部・野村昌二)
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 この夏、公開される実写映画「進撃の巨人」。特撮技術を駆使して巨人と人間との戦いを描いたこの作品、その制作の裏側を、特撮監督の尾上克郎さんに聞いた。

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「巨人」の役はオーディションで選びましたが、僕と特殊造型プロデューサーの西村喜廣さんが担当し、200人近い中から最終的に20人に絞りました。中学時代に平泳ぎの五輪代表選手だった女性とか、身長2メートル近い女性とか……。フライパンを素手で曲げられるという筋肉自慢もいましたね。その中から、どうつくり込めばそれぞれが原作のイメージに近い「巨人」になるか、ということを考え抜いて選びました。

 今回の映画の特撮は、これまで僕が携わった特撮の中で最も大変で難しかった気がします。人間と巨人という異質なものが、同じ空間で密接に絡むカットがすごく多かったからです。本編を撮る樋口(真嗣)君とのコンビネーションがうまくいかないと、いい特撮シーンは絶対に撮れない。ただ、樋口君はコンテで、僕のところは「このシーン、よろしく」とだけあったり、細かい指示は書いてない(笑)。だけど、彼とはもう30年来の付き合い。具体的な指示はなくても、何を要求しているかは、だいたい見当がつきました。

 原作者の諫山創先生とは、それほど深くは話していません。けれど、原作にある格闘シーンで巨人がパンチを繰り出す時のスピード感や構図は、先生がもっとも表現したいところだと感じたので、そのイメージを壊さないように気をつけて、総合格闘技を意識しながら撮りました。この映画は言ってみれば、「偉大なるB級」でしょうか。といっても悪い意味ではなく、みんなが好きなものということです。映画館では、登場人物になりきるなりして、巨人の世界観の中で遊んでほしいですね。

AERA 2015年8月3日号より抜粋