アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はマーリン・エンターテイメンツ・ジャパンの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■マーリン・エンターテイメンツ・ジャパン マスター・ビルダー 大澤よしひろ(29)
大澤よしひろは牛丼を作り続けていた。作りながら、牛丼ではなく、将来のことを考えていた。まずは雑貨屋に就職しようか──大阪でアルバイトをしていた26歳の頃である。
女神の前髪は、レゴブロック製だったのかもしれない。2012年6月、東京・お台場に「レゴランド・ディスカバリー・センター東京」がオープンするという。レゴのジオラマや体験型アトラクションがそろう、当時アジア初の施設だ。その運営を担うマーリン・エンターテイメンツ・ジャパンが、開館を前に、レゴを使った遊びの可能性を引き出す「マスター・ビルダー」を募集していた。
全国から選ばれた約30人によるコンテストを勝ち抜いた大澤は、日本では初めて、世界でも現在12人しかいないこの肩書を得た。ワークショップで子どもたちにレゴの楽しさを伝えているほか、実用的なレゴ作品の作り方を紹介する、高校生以上が対象の「大人のレゴ教室」の企画を練るのも役割の一つ。スマホスタンドなどのアイデア作品を生んだ。
レゴには自由がある。突起の数が2×4列のブロック2個で、組み合わせは24通り。6個ならば9億通り以上だ。大澤がその豊かさに夢中になったのは幼稚園のとき。大好きな自動車をよく作った。中学生のある日、美術館の企画展示で、レゴでできたミレニアム・ファルコンを見た。映画「スター・ウォーズ」に登場する宇宙船だ。周囲はレゴから卒業していたが、「こういうのが作りたい」と情熱は燃え上がった。高校、大学と作品を作り続け、今につながる技術と発想力を養った。
等身大の自分自身を作ってほしい──アエラの依頼に応えて制作したのが右の作品だ。身長168センチの大澤を再現するのに、2カ月かけて約2500ピースを平面に並べた。
「レゴって、想像したものを表現する素材というだけでなく、たくさんの人とコミュニケーションできるツールでもあるんです」
大澤の信念は、レゴ人気の秘密に通じる。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・宮下直之)
※AERA 2015年4月6日号