
囲碁界でひとりの女流棋士が注目を集めている。タイトルを総なめにして、ダンスや歌でも才能を発揮する台湾出身の謝依旻(シェイイミン)さんだ。
一見すると、のんびりしているようにみえる。「癒やし系ですね」とたずねると、囲碁棋士の謝依旻さん(25)は目を丸くして言った。
「生まれて初めて言われました」
このインタビューの3日後、1月に防衛に成功した女流棋聖の就位式が、都内のホテルであった。台湾メディアの記者たちが囲み、質問を投げかける。
「恋人はいませんか?」
普通ははぐらかすか、笑ってごまかす質問だが、謝さんは、
「あちこち対局で飛び回っているのに、どうしたら彼氏をつくる時間があるのでしょうか?」
静まりかえる記者たち。確かに癒やし系ではないようだ。伝わってくるのは、一つひとつの言葉を考えながら話す生真面目さ。台湾中部の苗栗という地方で育ち、12歳で日本に渡ってきて1人で戦ってこられたのも、そんな性格ゆえだろうか。