わかばクラブ 蒲谷亘さん製薬会社から転職、29歳の時、薬局を開業。じきに「廃棄処分」になる薬があまりに多いことに疑問を抱き、会社を設立して「リバイバルドラッグ」のサイトを立ち上げた(撮影/高井正彦)
わかばクラブ 蒲谷亘さん
製薬会社から転職、29歳の時、薬局を開業。じきに「廃棄処分」になる薬があまりに多いことに疑問を抱き、会社を設立して「リバイバルドラッグ」のサイトを立ち上げた(撮影/高井正彦)
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 いまや全国約5万6千店と、コンビニの店舗数を超え、「戦国時代」に突入した薬局。生き残るために、さまざまな新サービスに取り組む薬局の今を追った。

 川崎市高津区。住宅街にある小さな薬局の2階に事務所を構える「わかばクラブ」。2006年に「リバイバルドラッグ」というサイトを立ち上げ、全国の薬局で余った医療用の薬を預かり、必要としている薬局にネット販売している。

「薬局だけで、年間100億円分以上の薬が、期限切れで廃棄されています」と、薬剤師でもある蒲谷亘(わたる)さん(47)。薬局で大きなリスクになっているのが、期限切れの薬だ。蒲谷さんによれば、1店舗の薬局が廃棄する薬は年平均20万円分ほど。それを全国の薬局数で掛けると膨大な額になる。

 薬局は薬剤師法により「調剤を拒否してはいけない」と定められている。つまり、たとえ一人しか利用しない薬であっても、薬局は処方箋に書かれていれば用意しないといけないのだ。しかし、薬は問屋からの「箱買い」が原則。利用者が少なかったり、来なくなったりすれば余ってしまうことになり、通常3年の使用期限が過ぎると廃棄処分しなければいけない。資金力の弱い中小薬局は、「在庫」を抱え倒産するケースも少なくないのだ。

「リバイバルドラッグ」には、全国1100店余りの薬局が会員登録。同社の倉庫には、風邪薬から抗がん剤まで、ありとあらゆる約3600品目もの薬が保管され、売り主と買い主の両方から手数料をもらう。

 蒲谷さんは、薬局は「駐在所」のような存在だと話す。

病気を持った人だけでなく、その家族も含め、困ったことがあれば駆け込むことができるような場所にしなければいけない。その意味でも、地域に残って根ざしていく必要がある。こうした小さい薬局同士が助けあっていく仕組みが、その一助になればと思っています」

AERA 2014年10月27日号より抜粋