「食育」が叫ばれて久しい。アエラが9月1日号で「子どもを犯罪者にしないためにできることは何か」を取材した際は、数人の専門家が「家族で囲む食卓」の重要性をあげた。だが、わかっていても、それができない。ワーキングマザーにとって食卓は、「いまそこにある危機」なのだ。

 小学1年と保育園、2人の子どもを育てながら、IT会社でマーケティングを担当する女性(37)も、「食卓クライシス」に悩む。

「土曜日は毎週、大量の豚のカタマリ肉を塩漬けにすることから始まるんです」

 なにやら本格派の気配を感じるが、彼女曰く、この前準備が「地獄のヘビーローテーションの幕開け」だ。塩漬け肉を寸胴鍋でコトコト煮込むと、スープが一丁あがり。取り出した肉は薄切りにし、酢醤油で食べる。これにサラダでも添えたら、十分に豪華な食卓ではないか。

「そんなわけないでしょ(笑)。翌日は残った豚のカタマリ肉を細かく刻んでチャーハンとスープ。夜はスープをポトフ風にアレンジ。月曜日も、カタマリ肉を切って焼いてみたり煮てみたり、揚げてみたりの繰り返し。最終的には、スープも肉もカレーにしてしまいます」

 気がつけば、「土曜日に作ったものを翌週の金曜日まで使い回す」のが当たり前の生活。

「とにかく、買い物に行く時間も献立を考える暇もないもんで。ジャガイモ、ニンジン、冷凍ひき肉だけで半月乗り切ったこともあります」

 この時は、肉ジャガ→コンソメを投入してスープ→トマト缶を入れてトマト煮→カレールーを入れてカレーという流れを繰り返した。当然、「鮮度」は落ちていくので、

「最近、食卓に出して平気かどうか鼻が利くようになりました」

 さすがに腐敗の気配が疑われる「アヤシイ食品」は、子どもには出さず「夫に出す」という策で乗り切っている。

AERA 2014年10月6日号より抜粋