食品照射技術は全世界で続々と実用化されている。写真はタイ産のタマリンド、南アフリカ産の香辛料、米国産のハンバーガーパテ、タイ産のソーセージ(写真提供:小林泰彦さん)
食品照射技術は全世界で続々と実用化されている。写真はタイ産のタマリンド、南アフリカ産の香辛料、米国産のハンバーガーパテ、タイ産のソーセージ(写真提供:小林泰彦さん)
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 一部の食品に行われている「放射線照射」。原発事故でやむなく放射能を浴びたのが汚染農産物だが、それとは違い、病原菌を殺したり、発芽組織を破壊したりする狙いで、意図的に食品に放射線を浴びせることを言う。食品衛生法は、ジャガイモの発芽防止目的を除いて、禁じているが、これをある食品にも行うようにしようという動きがある。

 2012年7月から牛レバーの生食の販売・提供が禁じられているが、それを放射線照射で解禁させようという動きが始まっている。

 厚労省が主導し、国立医薬品食品衛生研究所とともに研究を進めている牛生レバーの放射線照射実験だ。実験期間は12年9月から15年まで。12年の牛レバーの生食禁止に際して寄せられた、業界団体の要請にこたえるための対応だという。問い合わせたところ、厚労省の科学研究費で研究する事案ということで、公式な発表はされていない。

 牛レバーの生食の販売・提供が禁止されたのは、ユッケなど牛の生食による腸管出血性大腸菌食中毒が多発し、死者も出たためだ。

 厚労省の研究は、生レバーから腸管出血性大腸菌を取り除くためのもので、三つの方法を検討中だ。ひとつは殺菌剤を注入し洗浄した後に凍結する方法、もうひとつは加圧、残るひとつが放射線照射だ。

 現在のところ、効果が確認されたのは加圧と照射。

 だが、加圧すると形状がかなり変わってしまい、レバーも黄色く変色し、硬くなるという変化があり、生食ニーズにこたえられるかは微妙だ。

 放射線照射については、菌の除去に必要な放射線量の大枠は把握し、今後は副生成物(2―アルキルシクロブタノン)の発生量を含め、実験を繰り返し行っていく予定という。

AERA  2014年7月14日号より抜粋