経済財政担当相、郵政民営化担当相などを歴任した竹中平蔵氏は、日本経済の成長戦略として規制改革が欠かせないとし、次のように話す。

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 規制改革は成長戦略の「一丁目一番地」です。企業の負担を軽くして、できるだけ自由に創意工夫ができるようにしないといけない。日本がいまより成長していくためには、それしか方法はありません。

 世界銀行が規制改革のランキングを行っていますが、日本は2000年には40位でした。それが小泉改革によって、06年には28位まで上がった。ところがその小泉改革が「行き過ぎ」と批判され、いまは47位。これではいけません。

 規制改革をしようとすると、そこには必ず既得権益者がいます。彼らは強い政治力を持ち、改革を阻もうとします。いわゆる岩盤規制というもの的に3割くらい減るはずです。

 そうなれば、原子力発電について選択肢が持てる。国民は現実的に「脱原発」を選ぶことが可能になる。CO2排出量抑制を目的に、原発存続も選択できる。エネルギー議論をする余裕ができるのです。

 そのうえで、日本も天然ガスのパイプラインを引くことを提言したい。欧州は、ロシアから黒海の下を通すなどし、約4千キロのパイプラインを何本も引いてきている。だから、欧州の天然ガス価格は8ドル程度だ。ところが日本にはそれがない。

 二つ選択肢がある。一つはサハリン(ロシア)から鹿嶋(茨城県)の火力発電所までが存在するわけです。例えば、普通の株式会社が農地を持てない。この三十数年間、医学部の新設が一つも認められなかった。こうした岩盤規制を撤廃するために、私たちは国家戦略特区構想を作りました。その法案がようやく、先の国会で通っています。問題はこれからどう実行し、成功事例を作っていけるかですね。

 ターゲットとなる分野は、幅広く考えたほうがいい。まず、規制がとりわけ強く、しかも潜在的成長力の高い分野として、やはり農業。国土面積が日本の9分の1しかないオランダが、世界第2位の農産物輸出国になっているわけですから。

 新しい考え方として、コンセッションというものもあります。インフラは国や地方自治体が所有し、その運営権を民間に売るというものです。英国のヒースロー空港は、滑走路も管制塔も民間企業が運営している。デンマークには世界68カ国で港の運営をしている多国籍企業がある。仏国にも約40カ国で水道を運営している企業がある。でも日本には、そういう企業が1社もない。国内でやらせてもらえないのだから、当たり前です。つまり、官業の民間開放が必要だということです。これによってサービスがよくなり、さらには財政資金も調達できる。私たちの試算では、当面売却できるものだけでも40兆円分にもなります。

 最後に、五輪の東京開催は、規制改革の大きなきっかけになると見ています。五輪には、開催国が世界に対してメンツを保つために国内改革を進める「セーブフェース効果」があると言われています。日本も五輪に向けて改革プログラムを作り、英国並みの規制緩和、シンガポール並みの法人税と空港アクセスの実現を目指すべきです。そうすればきっと、日本が世界一ビジネスのしやすい国になるはずです。

AERA 2014年1月13日号秋元康特別編集長号より抜粋