国際新赤坂ビル店の和佐佳苗さん(撮影/家老芳美)
国際新赤坂ビル店の和佐佳苗さん(撮影/家老芳美)
「じいじ」と交わした手紙。仕事の醍醐味は、客との距離感だ。客の目に感謝、感激を見ると「縮まった!」と感じるという(撮影/家老芳美)
「じいじ」と交わした手紙。仕事の醍醐味は、客との距離感だ。客の目に感謝、感激を見ると「縮まった!」と感じるという(撮影/家老芳美)

 大学生の間でささやかれる言葉にこんなものがある。

「履歴書にスタバでのバイト歴を書くと、好印象らしい」

「スタバ」こと「スターバックスコーヒージャパン」の上陸から16年がたった。2012年12月時点で、同社は965の店舗を国内に展開する。

 ネット上には、ファンによる接客術のまとめサイトがある。ホントかウソか、いわく、

〈トッピング全部のせができるかと聞かれ、「おいしくないのでオススメしません。代わりに私のオススメを教えますね」と返したスタッフの笑顔が最高だった〉
〈マイタンブラーとして理科実験用のビーカーを差し出した客に、当たり前のようにドリンクを注いだ〉

 なぜスタバの接客は愛されるのか。

 東京都心の「国際新赤坂ビル店」でストアマネージャーを務める 和佐佳苗さん(31)には、忘れられない接客経験がある。

 老齢のある男性と文通をしていた。仕事をリタイアしたその男性は「じいじ」と呼ばれ、スタバ各店を回ってパートナー(スタバでは従業員をこう呼ぶ)と会話をし、手紙のやりとりを日課にしていた。

「中身は日常生活や仕事の些細なことです。異動先の店にまで足を運んでくれて、他店のパートナーからの手紙を『宅配』までしてくださったんです」

 だが今の店に移った頃、じいじが姿を見せなくなった。「体の具合がよくない」と他店から聞いて見舞いにも行ったが、残念ながら他界した。後日葬式に行くと、和佐さんはそこで同僚を見た。2、3人ではない。その数は20人以上にも及んだ。

AERA 2012年12月31日号