NTTコミュニケーションズ営業担当課長の倉益洋一さん(44)は毎朝、起きると枕元のスマートフォン(スマホ)を手にとり、会社からのメールやその日のスケジュールをチェックする。通勤や営業訪問先へ向かう途中の電車内でも頻繁に操作し、業務の確認をする。

 実はこのスマホ、会社から貸与されたものではなく、1年半前に買った私物だ。通信会社なのにケータイが自腹なんて……と思えば、さにあらず。

「以前使っていた会社支給の携帯電話は、小さな画面でテキストを見るしかなかった。自前のものを仕事に使えるようになる日を待っていました」

 倉益さんがそう言って歓迎する新制度は「BYOD」と呼ばれる。“Bring Your Own Device”の略で、私物のスマホやタブレット端末などを仕事にも使う、という意味だ。このBYOD、IT関係者の間で注目の的である。本誌は1月、「スマホ活用で社員を生かす全社員支給時代」という特集を組んだが、先端のIT系企業では、さらにその先を行く現象が起きている。

 NTTコミュニケーションズは1999年7月の設立以来、携帯電話を社員に支給してきた。現在の貸与機種はいわゆる「高機能ケータイ」のフィーチャーフォン。これと並行して、2011年9月にBYODを開始した。

 社員にはBYODを勧めつつ、会社支給を続けるか、BYODにするかは社員の意思を尊重する。BYODを選んだ社員は、私物のスマホで業務の電話をかけるとき、同社が提供するスマホ向けの複数番号使い分けアプリ「050 plus for Biz」や、携帯電話向けの通話料金公私分計サービス「0035ビジネスモード」を使うと、通話料は会社持ちになる。同社にとっては自社サービスなので、これまで別会社のNTTドコモに払っていた通話料がまるまる浮くが、仮に他企業と同じ条件だとしても、削減額は年間で約1億3千万円を見込む。企業によっては「従来比の75%削減も可能」(広報)という。

AERA 2012年10月15日号